約1500個の超新星データによる最新宇宙論 豪スウィンバーン工科大の研究

2024年1月12日 10:11

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Dark Energy Survey(ダークエネルギー・サーベイ、DES)によるダークエネルギーカメラが検出する、1領域の例。この例では、超新星は明るい銀河中心の右上側に位置している。(c) DES collaboration

Dark Energy Survey(ダークエネルギー・サーベイ、DES)によるダークエネルギーカメラが検出する、1領域の例。この例では、超新星は明るい銀河中心の右上側に位置している。(c) DES collaboration[写真拡大]

 この宇宙で人類が観測可能な質量は、全体の約5%に過ぎない。それ以外の質量は直接観測ができないダークマターとダークエネルギーで構成されている。直接観測できない宇宙全質量の約95%の内訳は、銀河の運動を陰で支配するダークマターが約27%、全宇宙の膨張を支配するダークエネルギーが約68%だが、その理論的裏付けは、現在もなお研究が続けられている難題だ。

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 豪スウィンバーン工科大学は11日、約1500個の超新星データから導き出されたダークエネルギーに関する最先端情報を発表した。その結論は、宇宙定数は-0.98から-0.62の値をとり、ダークエネルギーの根拠となる宇宙斥力の存在は確実であるというものだ。

 宇宙定数とは、アインシュタインの重力方程式における宇宙項の係数で、これがマイナスの値をとれば、宇宙には重力以外に斥力が存在することになる。この斥力を支配しているのが、ダークエネルギーだ。

 今回の研究の結論は、ダークエネルギーの存在をより確かなものとするだけで、従来理論に大修正を加えるものではない。だが、1988年に最初に示唆されたダークエネルギーの存在は、たった52個の超新星データに基づくもので、反論の余地を残すものだっただけに、今回の研究成果はその約30倍のデータを以ってダークエネルギーの存在を理論的にゆるぎないものとした価値がある。

 超新星の中でも比較的小さな白色矮星によるものをIa型超新星と呼ぶが、この種の現象では最大光度が不変で、明るさでその事象までの距離を特定できる特徴があり、宇宙膨張状態の把握に役立つ。超新星が最も明るくなった瞬間を捉えるのは難しいが、超新星の光度変化の履歴を追跡すれば、最大光度は容易に知ることができるため、超新星データの追跡が宇宙膨張の観測に役立つのだ。

 今回の研究は、過去5年間にわたる25以上の機関からの400名を超える研究者らによるデータを集大成したものだが、宇宙に無数に存在する銀河の中から人工知能で超新星を見つけ出し、その中からIa型を自動抽出する画期的技術が研究を強力に後押ししている。

 なお研究成果は、(記事:cedar3・記事一覧を見る

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