水星に生命が存在する可能性 米惑星科学研究所の研究

2023年12月2日 20:29

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水星極致付近の特徴的な地形(ボレアリス カオス;赤色部分)(c) NASA

水星極致付近の特徴的な地形(ボレアリス カオス;赤色部分)(c) NASA[写真拡大]

 米惑星科学研究所は11月17日、水星の極域に氷河が存在する証拠を発見したと発表した。しかも、その氷河で生命が維持できるかもしれないというから驚きだ。

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 今回の研究は、NASAの支援を受けた国際研究チームによるもので、NASAが2004年8月に打ち上げた水星探査機メッセンジャーの観測データに基づいて実施されたものだ。

 メッセンジャーは2011年3月に水星周回軌道に投入され、2015年5月に水星表面に落下し、ミッションを終了している。その間に、従来は水星の地殻にはほとんど存在しないと考えられていた揮発性化合物を発見するなど、水星に対する見方を劇的に変える様々なデータをもたらした。

 水星における揮発性物質が豊富な表面(およそ厚さ10cmから100μmの表層)には、硫黄、塩素、ナトリウム、カリウムが大量に含まれることが明らかとなっている。それらは水星表面付近に昇華空洞と呼ばれる地形構造の存在を示唆する証拠であり、水星表面の深さ8~40mの広範な範囲に、揮発性成分が存在していると考えられている。

 研究では、これらの情報からさらに発展させ、水星には深さ数キロメートルに及ぶ揮発性物質に富んだ層(略称VRL、研究者らはこれを”水星の氷河”とも表現している)が存在することを示唆している。

 VRLが形成された原因は、そもそも水星の地下深くに存在していた氷河が、今から39億年前の後期重爆撃期における度重なる隕石衝突により、表面に露出したためではないかと結論付け、VRLでの生命存在の可能性にまで言及している。

 この結論は、従来ハビタブルゾーンが主に恒星からの距離によって特定されるという考え方に、一石を投じるものとなった。つまり恒星からの距離だけでなく、その惑星を構成する地層の深さも考慮することで、従来限定的に語られてきたハビタブルゾーンが、水星という極端に恒星に近い惑星にも、存在しうることを具体的に示したのだ。

 今回の研究の仮説が正しければ、生命が存在する可能性のある領域は従来よりもかなり広がったことになる。なお研究の詳細は、11月17日付けで科学誌「Planetary Science Journal」に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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