和服の日本和装は、インバウンド人気で盛り上がるか!?

2023年10月19日 08:57

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2023年9月からは俳優・吉瀬美智子をイメージキャラクターに起用している(画像: 日本和装ホールディングスの発表資料より)

2023年9月からは俳優・吉瀬美智子をイメージキャラクターに起用している(画像: 日本和装ホールディングスの発表資料より)[写真拡大]

 株主手帳の企画で、日本和装ホールディングス(東証スタンダード。以下、日本和装HD)の道面義雄社長を取材する機会を得た。日本和装HDのビジネスモデルは「無料着物教室」開催⇔「加盟店(染色・織物業者)の着物・帯・和装小物」の販売仲介。

 そもそも同社に興味を抱いた入り口は、道面社長の略歴。大学を中退し役者を夢見て上京。が本人の言葉を借りれば「箸にも棒にも掛からず」、故郷の広島にUターン。

「仕事を探さねば」と門を叩いたのは、地元のハローワーク。2社を紹介され受験。ともに内定は得たが、先に通知が届いた日本和装HDに21歳で飛び込んだ。ハローワーク経由の上場企業社長。失礼な言い方かもしれないが、なんとも言えない微笑ましさに話を聞きたいと思った。

 日本和装HDは収益予想を「売上高◎◎◎~□□□」と言った具合に、「レンジ」方式で発表している。同席した鶴野尚史専務は、「春と秋に教室のCMを打つ。が市場環境等の影響もあり、当たり外れに晒される。結果、過去に下方修正を余儀なくされたこともあり・・・」と正直に応えた。

 現状で講師150人余りにより年間、出張も含め460超の教室を実施している。がそうした基軸のビジネスモデルだけでは、詳細は省くが収益動向が示す通り「ターニングポイントを迎えている」と言わざるを得ない。だからこそ、今回のZoom方式を含めIR活動に注力しているとも言える。

 その当たりは道面社長も重々承知している。「加盟店さんとの関係をより密にしながら・・・」とした上で、「我々がこれまで扱ってきたものは、高級品。若い方々へのアプローチが希薄だった。そこで教室方式に加え、若者層に馴染みが深いECを展開する。浴衣や洗える着物などを対象に、EC方式を拡充していく。また“そうこれ”と呼んでいるが、一点者のPB商品の開発にも積極的に取り込む。休眠顧客(富裕層)を改めて取り込むための催事、また若者向け商品の拡幅の両面を見据えて」と、具体的に言及した。

 ところで日本和装HDを投資対象として捉える場合、今回の取材日の終り値に対する予想税引き後配当利回りは3.4%水準。一見「魅力的」とも映る。がいかんせん、出来高は薄い。つまり流通性に欠ける。これをどう解決するかが、大きな課題。

 参加した他のメンバーから「例えば、創業者が大半(53%強)を占める持株に放出等の策を執るお考えは・・・」という質問が出た。道面社長は「なんとも答えに窮する質問・・・」と苦笑したが、「加盟店さんにも株主が少なくない。創業者の持株問題を含め、株式の流通化には特定株主比率の改善が大きな課題と認識している」と言い及んだ。

 インバウンドが勢いを回復している。ものこと。こと(文化)の一翼をもの(着物)が担っていることは論を俟たない。諸々の観点から、しばし注目したい企業である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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