130億光年彼方のダークマター、質量を初めて測定 東大

2023年9月12日 08:33

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ダークマターハロー、銀河、ブラックホールの相互関係のイメージ図。左・中央・右の図が、それぞれダークマターハロー・銀河・ブラックホールを表す。サイズはそれぞれ数十万光年、数万光年、0.00001光年程度。(画像: 東京大学の発表資料より。左図 (c) 2015 石山智明、中山弘敬、国立天文台4D2Uプロジェクト)

ダークマターハロー、銀河、ブラックホールの相互関係のイメージ図。左・中央・右の図が、それぞれダークマターハロー・銀河・ブラックホールを表す。サイズはそれぞれ数十万光年、数万光年、0.00001光年程度。(画像: 東京大学の発表資料より。左図 (c) 2015 石山智明、中山弘敬、国立天文台4D2Uプロジェクト)[写真拡大]

  • 各時代で測定したクェーサーのダークマターハロー質量。図の左端が現在を表し、右へ行くほど過去の宇宙を示す。今回の研究結果(赤丸)は、これまでの研究(黒四角)よりも遥かに過去の時代で測定を行っている。ほとんどの測定結果は、赤色で塗られた領域内に存在しており、宇宙の幅広い時代でクェーサーのダークマターハローの質量は変化していないことがわかる。赤と緑の線は、130億年前の様々な質量のダークマターハローの標準的な質量変化を表す。今回の研究結果(赤)を基に質量変化を計算すると、約130億年前のクェーサーは現在の宇宙で最も重たい銀河団のダークマターハローと同程度に成長すると予測される。(画像: 東京大学の発表資料より)

 銀河の中心に超大質量ブラックホールが存在することは今や常識だが、銀河の誕生や成長にダークマターが大きく関わっていることは、あまり知られていない。

【こちらも】ダークマターの謎に迫るいて座矮小銀河からのγ線放射検出  東大らの研究

 また銀河中心の超大質量ブラックホールは活動性が高まると、周囲の物質が飲み込まれる過程で膨大なエネルギーが解放され、クエーサーと呼ばれる天体となって凄まじい光を放つ。一方様々な年代に出現したクエーサーを取り巻くダークマター質量を観測し、系統化すると銀河進化プロセスの謎解明につながる。

 従来、クエーサーを取り巻くダークマター質量測定は、120億年前までのものに限定されていた。その理由は、120億光年以遠の銀河は遠すぎ、ダークマター質量の測定に必要となる銀河密度を確保した測定が困難だったためだ。

 だが東京大学は9日、すばる望遠鏡に搭載されたハイパーシュプリームカムによる広範囲かつ高感度の大規模観測により、130億光年の彼方にある107個の銀河(これは従来の3倍の観測密度にあたる)で発現したクエーサーを用い、その空間分布からダークマター質量評価に成功したと発表した。

 今回の観測で130億年前の銀河中心を取り巻くダークマター質量は、5×10の12乗太陽質量という結果が得られたが、これは従来の120億年前までのクエーサーの測定結果と非常に近い値だったという。

 この結果からクエーサーが出現するために必要となるダークマター質量は、銀河の誕生年代に関わらず、ほぼ一定の値であることが示唆された。

 銀河の一生には様々な進化プロセスがあり、クエーサー出現時期は限定される。また1つの銀河の進化のプロセスを捉えた場合、クエーサー出現を終えた銀河はその後も徐々に成長し、130億年前のクエーサー(現在は銀河だけが残りクエーサーの活動は終了している)を取り巻くダークマター質量は、現在10の14乗太陽質量になっているはずだという。

 遠くの銀河は暗く、観測が非常に難しい。しかしクエーサー出現銀河は、観測が十分に可能な光量を確保できる。クエーサー研究は今後も銀河進化の謎解明に一層貢献してゆくだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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