中国インバウンドは期待薄か!?

2023年9月1日 08:16

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●インバウンドに逆風?

 中国の団体旅行が解禁され、インバウンドが完全にコロナ前と同水準に回復すると期待されてきたが、ここにきて思わぬ逆風が吹いている。

【こちらも】気になる中国恒大ショックの規模

 不動産大手・恒大集団の米連邦破産法第15条申請に端を発し、壁桂園など大手不動産の危機も囁かれる中国版リーマンショックへの懸念に加え、福島第一原発の処理水の海洋放出問題が大きな重石になるかもしれない。

 中国の団体旅行解禁により、コロナ前の訪日客3000万人水準の回復や、消費額の押し上げも期待されている。

 コロナ禍を乗り超え、インバウンドが戻りつつある中、最後のピースであった中国の団体旅行解禁により完全復活のはずだったが、思わぬ横やりが入った。

 インバウンドの完全復活には期待できないのだろうか?

●団体旅行解禁と処理水問題

 中国・習近平政権は8月10日、日本・米国・オーストラリアなどの国・地域への団体旅行を解禁すると発表した。

 航空・鉄道会社や百貨店などインバウンド関連の株価が上昇した。

 一方、8月24日に日本政府が福島第一原発の処理水を海洋放出すると発表したことに、中国は猛反発。28日には、日本の水産物の輸入を全面的に停止した。

 日本製品の不買運動や団体旅行のキャンセルが起きていると言われており、飲食店などへの嫌がらせの電話などもある。

 松野官房長官は「科学的見地に基づき、丁寧に説明する」としている。

 処理水が放出されてからは、インバウンド関連の株が売られた。

●心配される今後の影響

 処理水の問題は中国人観光客が影響を恐れ、飲食店の売り上げに影響を及ぼす可能性も否定できない。特に、寿司などの魚料理が避けられる恐れもある。

 中国の景気悪化は恒大集団問題の前から囁かれており、そもそもインターネットでの買い物が主流になりつつある今、以前のような家電量販店や百貨店での“爆買い”は期待薄という指摘もあった。

 9月末には国慶節があり、書き入れ時を迎えるが、それまでに処理水問題で対日感情のさらなる悪化、中国版リーマンショックの到来といったリスクなどで、中国からのインバウンド消失のリスクも無視できない。

 マーケットの面でもインバウンドへの過度な投資はしない方がいいだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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