トヨタが全固体電池を27年にも実用化! 本音でEVを買う時代が来る (2)

2023年6月17日 16:21

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全固体電池(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

全固体電池(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 因みに、トヨタが今回公表した充電時間10分以下で1200kmの航続という全固体電池のスペックをイメージするために、現行車種と比較をしてみた(比較を容易にするため充電時間を60分とする)。

【前回は】トヨタが全固体電池を27年にも実用化! 本音でEVを買う時代が来る (1)

 現在トヨタのbZ4Xは30分間の充電で約600kmの航続が可能なため、60分換算で1200kmということになる。テスラのモデルYは15分間の充電で260kmの航続が可能なため、同様に60分に換算すると1040kmである。

 トヨタの全固体電池搭載車両は、10分以下の充電で約1200kmの航続が可能と言うから、60分に換算すると7200kmとなる。現行車種と4年後に登場が見込まれる製品との比較が妥当かどうかは別にして、bZ4Xの6倍、モデルYの7倍強という圧倒的なパフォーマンスは実感してもらえるのではないだろうか。

 今までのEVをめぐる議論には、理念先行という弱点があった。充電インフラが未整備でも、航続距離が短くても、CO2削減のために「我慢」するという覚悟がなければ、買い替えを検討することすら現実的ではなかった。

 10分以下の充電で1200kmの航続が可能であれば、経済合理性で商品を選択することが可能になる。現在のガソリン車の給油程度の時間で倍の走行が可能と言うことだから、ガソリン車をも上回ることになるからだ。

 ネックがあるとすれば、高額と言われる製造コストが、その時点でどの程度引き下げられるかと言うことに尽きる。製造コストの削減が進まなければ、当初はバッテリー価格を吸収できる高級車種に搭載してスタートすることも考えられる。

 初めて市場に投入された高額商品が、その後の技術革新で徐々に値下げされることは工業製品ではごく普通のことだ。EVへの切り替えが遅いと揶揄されてきたトヨタが、蓄えてきたパワーを炸裂させる日が、遠からず到来する気配が出て来た。

 株式市場は正直だ。「トヨタが27年にも全固体電池EVを投入」と報じられた翌14日の東証では、トヨタ株の終値が対前日比6.28%増の2310円を付けた。日足の移動平均線はロケットのように飛び上がって見える。

 気は早いが、大容量という特性は電動トラックや電動船舶、電動航空機、エネルギーストレージシステム、可搬型電力供給装置などにも応用が可能だ。

 久しぶりに日本企業の底力を感じて、溜飲を下げる向きも多いことだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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