ファンケル、角質層の皮膚情報を解読するAI開発

2022年10月21日 16:33

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角層細胞の「かたち」の特徴約70種類を数値化するAIモデルの概要(画像: ファンケルの発表資料より)

角層細胞の「かたち」の特徴約70種類を数値化するAIモデルの概要(画像: ファンケルの発表資料より)[写真拡大]

  • AIモデルと数理モデルによる様々な皮膚生理状態の推定(画像: ファンケルの発表資料より)

 ファンケル(神奈川県横浜市)は20日、角質層の皮膚生理情報を解読するAIの開発に成功したと発表した。1枚の角質画像から皮膚の生理状態を多角的に評価できる。直営店で「AIパーソナル角層解析」として既にサービスを提供していると言う。

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 粘着性のテープで1000人の女性の皮膚表面から角質細胞を採取。デジタルマイクロスコープで撮影し、情報をAIに学習させ2つのモデルを開発した。

 1つ目は、角質細胞の形の特徴を数値化するAIモデル。角質細胞を自動認識し、大きさや明るさ、丸み、シワの有る無しを70種類に数値化する。

 2つ目は角質細胞に含有する「バイオマーカー量」を推定するAIモデルだ。皮膚の状態に深く関連する9つのたんぱく質(バイオマーカー)量が推定できる。

 2つのAIモデルが分析した角質細胞の形とバイオマーカー量をベースに、ファンケルは皮膚の生理状態との関係性を数理解析。肌の水分量や弾力、シワ、炎症、バリア機能などの推定ができことを発見した。

 角質細胞は皮膚表面の深部で細胞分裂によって誕生する。その後1カ月かけて代謝を繰り返し、皮膚表面に移動。見た目の「肌のきれいさ」に大きく影響する。

 今回開発した技術により、各層画像1枚から、皮膚の様々な生理状態を知ることができるようになる。目視では気づくことができない角質層内の大量の情報分析も可能だ。

 ファンケルは技術の一部を用いて、各層細胞をAIで解析する無料のカウンセリングサービスを9月16日から開始している。

 今後もAI技術による角質層と皮膚解析の発展を行う方針だと言う。

 今回用いられたAIは、東芝デジタルソリューションズの東芝アナリティクスAI「サトリス」。数万次元超のビッグデータの解析が可能で、少数の学習データでも高精度な推論が行える。

 開発された技術の成果は、画像の認識・理解シンポジウムと、国際化粧品技術者連盟の学術大会で発表されている。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る

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