木星の衛星エウロパ、氷の地殻から湖の噴出観測できるか NASAの研究

2022年10月13日 16:21

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探査機ガリレオが捉えた木星の衛星エウロパの画像 (c) NASA/JPL-Caltech/SETI Institute

探査機ガリレオが捉えた木星の衛星エウロパの画像 (c) NASA/JPL-Caltech/SETI Institute[写真拡大]

 NASAは2024年にエウロパクリッパーの打ち上げを計画している。NASAが木星の衛星エウロパの探査に力を入れる理由は、この星が生命誕生の可能性があるとの認識からだ。エウロパには水の氷からなる地殻があり、その内部には海が存在している可能性が示唆され、そこでは生命が誕生しているかもしれないとの期待が持たれている。

【こちらも】木星の衛星エウロパ、特徴的地形がもたらす生命存在の可能性 スタンフォード大の研究

 エウロパにおける水の噴出の可能性については、これまでにも様々な研究がなされ、ハッブル宇宙望遠鏡によって水蒸気の噴出が捉えられたとの情報もある。また探査機ガリレオがもたらしたエウロパの表面画像は、その地形の模様が水の存在によってもたらされた可能性を示唆している。

 だが、実際に液体の水の存在を確認するために、広大なエウロパの表面をくまなく探すのは非効率で、どこで水の存在の可能性が高いかをあらかじめ知っておく必要がある。

 NASAの科学者らは、2022年夏にアメリカ天文学会の惑星科学ジャーナルで公開された研究論文で、エウロパに存在する様々なパターンの地殻内部の湖を想定した、数値解析シミュレーション結果を公表している。これによれば、水の噴出が期待できるのは、氷に埋め込まれた浅い湖(表面から4~8km)からである可能性が高く、はるか氷の下(表面から8km以深)にある地球規模の大きな海から発生するものではないとのことだ。

 エウロパクリッパーがエウロパ付近に到達するのは2030年で、この際には約50回のエウロパへの接近が計画されている。表面の3次元立体カラー画像を取得し、赤外線カメラで表面温度をマッピングすることで、エウロパで起こっている地質活動を明らかにするのだ。

 これらのデータを詳細に分析していくことで、水の噴出がどこで起こるのか絞り込んでゆけば、それを直接捉えることも可能になるだろう。その際、エウロパクリッパーに搭載される紫外線スぺクトログラフによって、エウロパの水分に含まれる様々な物質の特定が可能になるかもしれない。もしアミノ酸やDNAのもとになる塩基成分が検出されれば、人類にとって画期的な発見になる。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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