丸紅と大手出版社3社が新会社設立 DXで返本率を下げる

2022年3月26日 08:10

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PubteXの事業概要(画像: 発表資料より)

PubteXの事業概要(画像: 発表資料より)[写真拡大]

 丸紅(東京都千代田区)と講談社など大手出版社3社が、出版流通の課題を解決する新会社を設立したと発表した。社名はPubteX(パブテックス)。DXを活用し、返本率低減をはじめとしたサプライチェーンの改善やオペレーションの効率化を手掛ける。

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 参画した出版社は講談社のほか、集英社と小学館。AIなどの先端技術を用いて、出版物の発行や配本を最適化するサービスを構築。出版社に提供し返本率の低減を目指す。

 書店は売れ残った在庫を出版社に返品できる委託販売制度を利用していることが一般的。だが、2019年の経済産業省の調査によると、書籍の返本率は32%、雑誌では40%にも及ぶと推計されている。高い返本率が出版社を圧迫しており、長年業界全体の課題となっている。

 PubteXは書籍情報や在庫情報、市場トレンドなど様々な流通情報を把握し、AIによって配本や発行の最適化を図る。サービスは2023年4月から段階的に提供を開始する予定だ。

 また、RFIDソリューション事業も行う。ICタグを書籍に取り付けてデータを記録。それに基づき書店の経営やオペレーションの改善を支援する。売り場の書籍推奨、万引き防止、リアルタイムでの在庫と管理、棚卸の効率化、万引き防止まで幅広く課題解決を手掛ける方針だ。

 サービス開始は2023年7月を予定している。それに先駆けて2022年夏頃には社内にショールームをオープンする考え。研究内容やサービスを公開し、業界内での認知と理解を広げる。

 全国出版協会・出版科学研究所によると、2021年の出版市場規模は1兆6742億円で3年連続前年越えと伸びている。だが、主なけん引役となっているのは電子出版で紙は縮小傾向にある。

 PubteXは、業界全体が抱えるサプライチェーンやオペレーションの課題を解決することで、日本の出版流通をサステナブルなものに変革することを目指す。

 尚、新会社の出資比率は丸紅34.8%、丸紅フォレストリンクス、講談社、集英社、小学館がそれぞれ16.3%となっている。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る

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