植物はなぜ雨に打たれると免疫を活性化するのか 仕組みを解明 名大

2022年3月17日 07:43

印刷

植物の表面にあるトライコームが雨を認識して免疫を活性化するイメージ。(画像:名古屋大学報道発表資料より)

植物の表面にあるトライコームが雨を認識して免疫を活性化するイメージ。(画像:名古屋大学報道発表資料より)[写真拡大]

 名古屋大学は9日、植物が雨に打たれることで免疫を活性化する仕組みを解明したと発表した。研究グループによれば、今回の研究成果は、農作物について雨に伴う病害の防止に応用することができる可能性があるという。

【こちらも】植物由来の乳酸菌、自己免疫疾患の予防や改善に効果 マウス実験で 広島大ら

■植物の免疫とは?

 意外に思われるかもしれないが、実は植物にも優れた免疫システムが備わっている。例えば、細菌やウイルス、カビなどに対して抗菌物質や活性酸素を生成したり、進入路となる気孔を閉じたり、細胞壁を物理的に強化したりする。

 特に雨は植物によって危険だ。雨は、植物にとって必要不可欠の恵みである反面、雨には、植物に病害をもたらす細菌やウイルス、カビなどが多く含まれている。

 そこで植物は、雨が降ると、病害の危険を避けるために、免疫を活性化してこれに対抗する。

 しかしこれまで、雨によって植物がどのようにして免疫を活性化するのか、その仕組みについてはよく解っていなかった。

■雨に打たれると植物が免疫を活性化する仕組みとは?

 研究グループは、RNA-seq法と呼ばれる方法を使って、植物が雨に打たれることで遺伝子がどのように活性化するかを詳しく調べ、免疫を活性化する仕組みを遺伝子レベルで解明した。

 植物は、雨に打たれると、葉の表面にある糸状の細胞トライコームでこれを検知。周囲の細胞にカルシウムウェーブを発生させ、免疫に関係する遺伝子を抑制するタンパク質の働きを抑えることで、免疫を活性化するという。

 カルシウムウェーブとは、カルシウムイオン(Ca2+)の濃度が、周囲の細胞にウェーブ状に広がっていく現象のことだ。CAMTA転写因子と呼ばれる、免疫に関係する遺伝子を抑制するタンパク質の働きを抑えることが解っている。

 こうして植物は、必要不可欠の恵みである反面、さまざまな病害をもたらす雨から、身を守っているというわけだ。

 研究グループでは、今回の研究成果について、雨に伴う病害を予防する新しい農法の開発に繋がるのではないかと期待を寄せている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事