超小型衛星でも注目のセーレンは、収益本格回復のレールに乗るか!?

2022年3月10日 16:22

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 総合繊維産業:セーレン(東証1部)に久方ぶりに興味を持ったのは「収益の低下傾向に歯止めがかかりそう」という状況と、「人工衛星事業で実績を積み始めた」という事実である。

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 後者は、福井県や東京大学とキューブサットと呼ばれる超小型人工衛星(1kg~10kg)の開発を始めたのが入り口。「今後、衛星は超小型にシフトしていく」という知見から、衛星サービスのベンチャー企業と業務提携で展開が進み既に3基が打ち上げられている。積み重ねてきた「多様な素材力」が、ベースになっている。

 だが現時点での収益低下傾向への歯止めは、キューブサットが担っているわけではない。しかし株式投資材料としては、サプライズに富む「貴重品」といえよう。

 前者は、こんな具合だ。2020年3月期に続き前21年3月期も、「17.9%減収、18.3%営業減益、26.9%最終減益」と低迷状態が続いた。対して今期は立ち位置が低くなったこともあるが、「10.4%の増収(1090億円)、17.1%の営業増益(100億5000万円)、12.0%の最終増益(70億円)」計画で立ち上がった。そして、久方ぶりに上方修正に至った。

 第3四半期開示と同時に、売上高据え置きも「営業増益率21.2%の104億円、最終増益率23.2%の77億円」としたのである。利益増の背景を第3四半期の状況から、確認したい。

(I)車輌資材事業: 自動車用シート材やエアバッグ素材分野。前年同期比12.6%の増収、26.6%の営業増益。国内では半導体不足等に晒された結果、減収・減益となった。牽引したのは海外事業。とりわけ中国経済の景気回復で、「クオーレ○R(耐久性で本革の2.5倍、軽さで2分の1なシート材)」など差別化商品の販売が堅調な回復となった。

(II)ハイファッション事業: ファッションアパレル向けは低迷。スポーツアパレル・インナーアパレルが順調に推移。15.1%の増収、営業損益は損失から6億300万円回復の2億8400万円と急浮上した。

(III)エレクトロニクス事業: 一部のエレクトロニクス商品向けではコロナ感染症拡大で販売不振/在庫増を強いられた。だが巣ごもり需要やオリンピック特需でハードディスク・TV向けや、海外向けスマフォ商材増で9.9%増収/22.3%営業増益。

(IV)メディカル事業: 化粧品事業。ジェネリック向けの貼付材や絆創膏向け用途が拡大。高性能ウイルスマスク技術が、インテリア・介護など応用展開が進んだ。16.1%増収、17.8%営業増益。

 注目すべきは第3四半期時点で総売上高比率58%強、総営業利益比率67%強の(I)事業であろう。半導体不足の現状や部品の供給問題は予断を許さないが、国内自動車市場に目途が立つか否かで、来期以降のセーレンの収益動向も決まってくるといって過言ではない。

 半導体市場の光明=セーレンの収益回復過程本格化、ということになる。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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