日本で新型コロナの感染者と死亡者が圧倒的に少ない理由は・・ファクターX!

2021年12月24日 11:49

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 新型コロナウイルスが、20年1月に初めて世界で認識されて以降に語られてきたことの中に、「日本での感染者数と死亡者数が少ないのは何故だ」という疑問がある。ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥氏は、この疑問に日本特有の理由があると感じて、その要因を仮に「ファクターX」と名付けて解明への意欲を見せていた。

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 12月21日現在、米ジョンズ・ホプキンス大がまとめたデータで、国別の感染者数と死亡者数の累計値が多い順に並んだ国家を、総人口に占める死亡率に着目して比較すると次の通りだ。ブラジル0.295%、アルゼンチン0.264%、コロンビア0.261%と南米国家が上位を占め、アメリカ0.247%、ポーランド0.241%、イタリア0.224%、イギリス0.220%と欧米国家が続く。

 上位15カ国中でアジアから掲載されているのは、インドネシア0.054%、インド0.035%となり、掲載外だが日本は0.014%である。南米や欧米国家の死亡率は日本の20倍~10数倍にもなっている。何らかの要因がなければ考えられない位の差は未だに健在である。なお、日本には及ばないまでも、アジアの国も死亡率が低いという傾向が際立っている。

 衛生意識が高い日本では、マスクの着用に対する拒否感は少なく、手洗いや入浴は日常的な行為として生活に定着している。他の人々との挨拶はお辞儀が基本で、ハグや握手は少ない。家の中を土足で歩き回るようなこともない。こうした他国との文化的な違いが身に付いて、自然体でこなしているところが日本の特徴と言えよう。

 生物学的な要因としては、当初からささやかれていた「BCG接種説」がある。BCGは結核菌の抗体を作るための予防接種なので、ストレートに新型コロナへの効果を認めることは出来ないようだが、相関関係を感じるほどの格差が認められる。

 特にアメリカは過去にBCG接種を義務化したことのない国であり、イタリアも現在は義務付けてはいない。日本でBCGの全面的な接種がスタートしたのは1951年以降のため、概ね70歳を超えた高齢者が危険であることも、現在までの死亡実態に沿ったものと言える。もちろん免疫機能が低下している高齢者が、新型コロナウイルスに罹患して死亡する例が多いことは言うまでもない。

 12月になって、理化学研究所の研究チームが「A24」という白血球のタイプに関する研究成果が、英科学誌に掲載されたことが明らかになった。「A24」は季節性コロナウイルスにも、新型コロナウイルスに対しても固有の働きをすると言う。

 「A24」タイプの血液細胞に、ウイルスのスパイクたんぱく質の一部を構成するペプチド「QYI」を投与すると、キラーT細胞が活発化して増殖すると言う。季節性のコロナウイルスに感染したことがあると、新型コロナに対しても交差免疫としての機能を果たす可能性が確認された。以前から可能性が指摘されて来た「集団免疫説」を補強することになりそうだ。

 「A24」は日本人の6割が持っているのに対して、欧米人には1~2割程度しか持っていない。もちろん、現在は細胞実験という研究の緒に就いたばかりであり、ファクターXとの決め付けが早計であることは間違いないが、今後の研究が期待される。

 恐らくファクターXは1つではない。色々な要素が複雑に絡み合った結果なのであろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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