底値が見えないソフトバンクGに、反転の見込みはあるのか?

2021年12月3日 16:56

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 ソフトバンクグループ(SBG)の変調が止まらない。3月18日に1万695円の年初来高値を記録して以降、多少の揺り戻しはあったものの、ほとんど下げ一方と言えるような動きを見せて、12月2日は5500円台に突入した。

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 ざっくり言えば半値も目前だから、孫正義会長兼社長お得意の純資産価値(NAV)も半減し、時価総額が10兆円を割り込んでいる。12月1日、SBGの傘下ファンドが出資する米ドアダッシュが10%近くまで急落したことや、SBGの成長神話を彩るシンボル的な存在だったアリババ集団の下げ止まらない影響が出ているようだ。

 11月8日に21年7~9月期(第2四半期)の連結決算(国際会計基準)で、最終赤字が3979億円だったと発表した孫氏は、当該決算を率直に「真冬の嵐のど真ん中にある」と表現していた。だが当日の終値が6161円だったので、そこから更に10%程値下がりした。

 しばらく表舞台に登場する予定のない孫氏が、現在の状況をどう表現するかは想像するほかにないが、既に使われた「真冬の嵐のど真ん中」がどん底の表現であるから、表現に苦慮することは間違いないだろう。

 特にこの1カ月、激しい動きがSBGを翻弄してきた。中国政府の規制強化が滴滴出行(ディディ・中国配車サービス最大手)の株価に波及し、下落を始めていたアリババ株は更なる深みへと進んでいる。

 新型コロナウイルスの変異である「オミクロン株」が、復興を目指し始めた世界経済に冷や水を浴びせて、マーケット全体が後ろ向きになりかけたところに、個別株が大きく反応しているところだ。

 SBGの事業モデルは良い方向に回り出すと2倍も3倍も嵩上げした成果を見せてくれるが、その動きは逆転した時にも変わらないから、有り金全部を信用取引で膨らました挙句に暴落した感じに似ている。どっちに進んでも、一息つく間が持てない。

 好調な時に、「5兆円の利益が出ても1兆円の損失が出ても意に介さない」と口にすることは、孫氏の姿を実像よりも大きく見せる効果があるだろうが、不調な時には投資家の神経を逆なでするのが関の山だ。

 株価の底値を示す戯言のような「半値八掛け2割引」を、11月に純資産価値(NAV)を基準に算出された適正時価額1万3000円に当てはめると4160円になる。SBGの株価が4千円台というのはショッキングだが、今までの値下がり状況を考えると、あと1000円少々という下げ幅には特別の違和感は湧いてこない。

 そう感じさせるのは2日、米連邦取引委員会(FTC)がSBGによる英半導体設計アームの売却計画に差し止めを求める訴訟を提起したと、伝えられたことだ。アームを米半導体大手エヌビディアに売却することは、反トラスト法(独占禁止法)に抵触するという判断だ。アームの売却に対しては英規制当局の厳しい見方も伝えられていたから、ダメを押されたような形である。

 おまけに、東南アジアに於ける配車最大手のグラブ・ホールディングスが2日、特別買収目的会社(SPAC)と合併して米ナスダック市場に上場したところ、合併前日の終値を2割以上下回るという番狂わせがあった。グラブ・ホールディングスもSBCが出資して、大きな果実を収穫する目論見だったから計算違いが1つ増えたことになる。

 SBGはやがて春を迎える「冬の嵐に見舞われた」というよりは、氷河期に飛び込んだのではないかと感じさせるほどの、悪材料目白押しの渦中にある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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