宇宙誕生直後に形成のリチウム保存する褐色矮星 スペインの研究所が発見

2021年11月25日 16:04

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星の質量とリチウム保存量の関係。水色の正方形の大きさがリチウム保存料を示す。Reid1Bは保存量が多いが、それと連星をなすReid1Aは保存量がほぼゼロであることがわかる。(c) GabrielPérezDíaz、SMM(IAC)

星の質量とリチウム保存量の関係。水色の正方形の大きさがリチウム保存料を示す。Reid1Bは保存量が多いが、それと連星をなすReid1Aは保存量がほぼゼロであることがわかる。(c) GabrielPérezDíaz、SMM(IAC)[写真拡大]

 スペインのカナリア天体物理学研究所は24日、138億年前に起きたビッグバンの際に形成されたと思われるリチウムを、内部に保存している褐色矮星の存在を確認したと発表した。

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 褐色矮星とは、質量の面から見れば、恒星と惑星の境界にある存在だ。水素の核融合反応を起こせるほどの質量はないが(これを起こすためには、最低でも太陽の8%以上の質量が必要とされている)、それよりも低温で核融合反応が起きる重水素やリチウムの核融合反応が起こせる程度の質量(太陽の1%程度の質量、木星の質量の13倍程度)は持つ星である。

 星の明るさでランク付けをするならば、褐色矮星は最も暗い部類に属す。褐色矮星のもう1ランク上の星である赤色矮星以上の明るさを持つ星が、恒星に分類される。そのため褐色矮星は恒星になれなかった残念な星ということになる。

 だが核融合反応を十分に起こせるだけの質量を持たないがゆえに、褐色矮星の内部に捉えられた物質は、時間が経過してもそのほとんどは保存されたまま維持されることが期待できる。

 カナリア天体物理研究所の研究者らは、褐色矮星で構成される2つの連星系「DENISJ063001.4-184014AB」と「DENISJ225210.7-173013AB」について分光分析を行い、そのうちの1つから、リチウムのスペクトルを検出したという。

 前出の2つの連星系の名称には、末尾にいずれもABの記号が付与されているが、これは、それぞれの連星系が2つの星で構成されていることを意味している。つまり、4つの褐色矮星の分光分析を実施し、そのうちの1つ「Reid1B」という星(実は4つの褐色矮星の中でこの星が最も軽い)から、リチウムスペクトルが検出されたのである。

 Reid1Bは、地球から16.9光年離れ、誕生から11億年が経過している。検出されたリチウム量は、地球に存在する量の1万3千倍という。

 また褐色矮星の中でもリチウムを保存できる星の質量には、木星の51.5倍に境界線がある。つまりそれより重い星では、リチウムは保存されないが、それより軽い場合にはリチウムが保存される。ただしReid1Bに保存されていたリチウム量は、理論値より10%少ない。このずれはReid1Bがまだ解明されていない挙動をしているためだという。 (記事:cedar3・記事一覧を見る

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