小惑星帯で発見された珍しい彗星 米国惑星科学研究所

2021年10月5日 07:21

印刷

従来の典型的な彗星であるハレー彗星と今回発見された2005 QN137の軌道の違い (c) Henry H. Hsieh(PSI)

従来の典型的な彗星であるハレー彗星と今回発見された2005 QN137の軌道の違い (c) Henry H. Hsieh(PSI)[写真拡大]

 彗星と言えばハレー彗星に代表されるように、従来の常識では長い公転周期の楕円軌道を描きながら、太陽系のはるかかなたの冷たい世界から、時折太陽に接近して長い尾の雄姿を示す存在と考えられてきた。だが、今夏、小惑星帯で円に近い軌道で太陽系を周回している、珍しい形態の彗星が発見された。米国惑星研究所は4日、この彗星についての最新の研究成果を発表した。

【こちらも】ボリソフ彗星のような星間彗星、実は珍しくない存在か ハーバード大の研究

 この彗星は、小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)により2021年7月に発見されたもので、小惑星(248370)2005 QN137と呼ばれ、メインベルト彗星に位置付けられている。メインベルト彗星とはウィキペディアによれば、「小惑星帯内を周回し、軌道の一部において彗星のような活動が見られた天体である」とされている。

 この彗星は、小惑星として太陽系を周回しながら、何度も彗星のような挙動が確認された存在、と表現したほうが正確かもしれない。彗星のようにふるまう原因は、この小惑星に存在している氷の塊が、昇華を繰り返し起こしているため、と考えられている。

 従来、彗星と小惑星は完全に別個の存在であると認識されてきた。だが2005 QN137のような小惑星でありながら、彗星のような挙動を示す天体も、尾を放つ原因物質が氷であるという彗星の物理的な定義に当てはまる存在として、認識されるようになってきた。

 2005 QN137は、核の大きさは直径3.2kmしかないのに、尾の長さは72万kmにも及ぶ。だがその幅は、1,400kmしかない。尾がこのような形態をとる理由は、尾の本体であるガス粒子の噴出速度が極めて遅いためだと考えられている。だが噴出速度が遅いにもかかわらず、尾が本体の重力から逃れて非常に長く伸びてゆく原因についてはまだ不明であり、研究の余地が残されている。

 メインベルト彗星は、最初の発見が2006年と比較的新しく、これまでの発見事例もそれほど多くない。ATLASの運用が開始されたのが2015年のことであり、このような天体はこれから発見数が増えていくと予想されるため、全貌の解明にはまだまだ時間がかかりそうである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事