EV車に集中投資する判断は正しいか

2021年6月23日 16:54

印刷

Photo:オーナメントの「ゼロエミッション」を名乗る資格はあるのか? ©sawahajime

Photo:オーナメントの「ゼロエミッション」を名乗る資格はあるのか? ©sawahajime[写真拡大]

  • Photo:トヨタの燃料電池大型商用トラックの新型プロトタイプ(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

●バッテリー発火事故映像

 Googleで「EV車 発火 動画」で検索すると、色々と驚く様な画像が参照できる。

【こちらも】EV化議論に先立ち認識すべき基礎要件

 TVの海外ニュースで、マンションのエレベータ内に乗り込んだ電動バイクが発火したり、人のいないバイク展示場で突如燃え出す電動バイクの防犯カメラ画像、並んで駐めたEVバスが突如燃え出して次々延焼するニュースを見た事がある。

 他にも、地下駐車場に並んだ高級車が突如発火する等、これでもかという位、沢山の動画がアップされている。

 EV車を保有するには、戻ったら充電して置く必要があるので、「車庫が確保できる一戸建て家屋」が必須だというのだが、それに皮肉を込めて「母屋に延焼しない車庫の確保」というのも、あながちEV車を貶める為だけでは無いと理解して貰えるだろう。

●航空機に持ち込めなかった携帯電話も

 小さなバッテリーの発火事故でも結構な被害が発生する。

 そこで、航空機を利用する際には、ビデオカメラやデジタルカメラの予備バッテリー、モバイルバッテリー等は、機内持ち込みの手荷物とし、搭乗者が監視下に置く必要があり、カウンターで預ける荷物に入れる事は出来ない。

 これは、万一バッテリーが発火した場合、客室内であれば直ぐに事故に気が付くが、人のいない貨物室だと、気が付かずに大事故に繋がるからである。

 どんな商品でも、「キヤノン・イオス」とか、「シャープ・アクオス」、「ホンダ・フィット」の様に、「製造した会社名+商品の名称」が組み合わさるのが普通だ。

 これに反して、携帯電話には商品名しか名乗らない商品が存在する。

 それは以前その会社の製品が、発火事故を相次いで引き起こし、一時は「機内持ち込みも禁止」となった為で、世界中でも日本国内向けに限って、会社名を伏せている。

 携帯電話の、あんなに小さなバッテリーが発火しても大きな被害を引き起こすのに、EV車の車載バッテリーではどれ程かは、冒頭に述べた動画で明らかだ。

 圧倒的な問題は、「国産」と「途上国」とでは、国の安全基準や、製品の安全に対する意識に絶望的な差異がある事だ。伊達に「国産・日本製」に拘っているのでは無く、「安心・安全」の為なのだ。

●ゼロエミッションとは名乗れない

 EV車を保有する理由付けとして、免罪符の様に「カーボンフリー」と唱えるが、日本の電源構成から見てあり得ない。

 走行するのに充電する電気だけをとっても、その電気は「自宅に太陽光発電システムを設置して、EV車にはその電気以外は使わない」ので無ければ、「ゼロエミッション」とはいえない。

 そして、その問題は充電に供される電気だけに限らない。

●EV車生産時にも大量のCO2排出

 「EV車生産」に関連して排出されるCO2は、従来の「内燃機関搭載車」を生産するよりも多量のCO2を出す。

 2月26日付「EV化議論に先立ち認識すべき基礎要件」でも述べたが、EV生産の完成検査時には充放電をしなければならず、1台生産するだけで家1軒の1週間分の電力を消費する。単なる「完成検査の為だけに」である。

 EV車「年産50万台」の工場なら、「1日当たり5,000軒分」の電気を無駄に充放電する。結果として、火力発電で新規にCO2を多量に排出する事になる。

●「燃料電池車」と「水素エンジン車」

 EV車を全面排除しても、日本には世界最高水準の「燃料電池技術」と「内燃機関技術」がある。

 「燃料電池車」なら、米国で大量輸送を担う「コンボイ」に登場する様な大型トレーラをカバーする事が出来る。

 「水素エンジン車」は、かつては「水素ロータリー」しか実用化は不能であった。

 しかし、2021年5月22日~23日の富士24時間耐久レースで、トヨタの「水素エンジン車」「ORC ROOKIE Racing Corolla H2 concept」が、完走を果たした。

 これにより、マイナーな「ロータリーエンジン」だけで無く、内燃機関の主流である「レシプロエンジン」にも「水素を燃料とするエンジン」の前途が明るく、大きく開けた。「水素社会の到来」は遠く無い。

●日本刀と青龍刀

 「水素を燃料とするエンジン」なら、日本が蓄積して来た内燃機関技術がそのまま活用可能である。従って、他国に対する「技術水準の優位性」はそのまま存続する。

 日本の自動車メーカーの技術水準と、それを支える部品メーカーの広範な裾野、磨き上げられた「日本刀」の様な、精緻な内燃機関を捨てて、鉄板をプレス機で型抜きし、グラインダーで刃を立てる程度のレベルで作成可能な、「青龍刀」の様なEV車に向かうと宣言したメーカーもあるが、本当に勿体ない決断だといわざるを得ない。

 6月20日、F1シリーズ第7戦フランス・グランプリで、レッドブル・ホンダが今季3勝目、通算13勝目を挙げた。ホンダ勢は1991年以来30年ぶりの3連勝である。

 ホンダのテクニカルディレクターの「まだまだやり尽くしたい。自分達は発展途上」との心情吐露を、経営陣はどんな思いで聞くのだろうか。

 世界的なEV車シフトに流されずとも、自動車は、将来も日本が世界をリードして行けると確信している。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事