すばる望遠鏡、彗星の核の表層成分を明らかに 地上からの観測では初

2021年4月7日 17:02

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 宇宙を観測する目の役割を果たすのが望遠鏡だが、NASAのハッブル宇宙望遠鏡がその世界を大きく変貌させた結果、地上の望遠鏡による観測の役割が低下した印象がある。地上の望遠鏡による観測が不利な理由は、大気の存在ゆえである。

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 大気中のちりが宇宙からのかすかな光を散乱させるだけでなく、大気の対流によって気流が乱れ、像が揺らいで見えることは地上では避けられない。ハッブル宇宙望遠鏡の口径は2.4mと地上の巨大望遠鏡に比べると小ぶりながら、過去約20年間にわたり、絶大なる観測成果をもたらしてきた。

 だが今回紹介するのは、日本の国立天文台がハワイで運用する、口径8.2mのすばる望遠鏡がもたらした成果についてである。国立天文台は6日、2016年に発見されたパンスターズ彗星に関して、すばる望遠鏡で中間赤外線域の撮像・分光観測を行なった結果、彗星としては初めて、水を含んだケイ酸塩鉱物の存在を明らかにしたと発表した。彗星の核の表層成分を捉えたのは、地上からの観測としては初めてという。

 水を含んだケイ酸塩鉱物が生成されるためには、300度以上に温度上昇した経験をパンスターズ彗星が持っている必要があるが、現在の軌道を飛行する限りは、120度程度までしか表面温度は上昇しないという。そのため、この彗星がかつては現在の軌道よりも、より太陽に近いコースを飛行していた可能性が高いことが判明したという。

 今回の成果により、今後地上から彗星の核について赤外線域の撮像・分光観測を行なうことにより、含水ケイ酸塩鉱物が、彗星に普遍的に存在するのか、あるいはかつて加熱された履歴を持つ進化した彗星にのみ存在するのかが解明され、太陽系の小天体の誕生と進化のプロセスが明らかになることが期待されている。

 太陽系に存在している小惑星や彗星などの小天体は、今からおよそ46億年前、つまり太陽系誕生直後に生じたと考えられている。それらを観測し研究することで、当時の太陽系の状況を把握し、太陽系進化の謎の解明につながることが期待される。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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