上場来初の減益から早々に立ち直る、ビーロットの何故

2021年3月17日 17:01

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 生来の天邪鬼なのか意地悪なのか。「上場以来、初の減益」などと聞くと、途端に「どれどれ調べてみるか」という気に駆られる。

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 ビーロット(東証1部)。主軸は、前12月期で売上高の3分の2近くを占める「不動産投資開発事業」。主体は富裕層を対象にした、既存物件をリニューアルし、価値を高めた上の再販。対象はオフィスビル・マンション・店舗・複合施設・ホテル。オフィスビルをコンバージョンしてホテルに改修するといったケースもある。

 2014年12月に上場。上場直後の14年12月の「73.8%営業増益、69.4%の最終増益」に始まり19年12月期の「20.5%営業増益、23.9%の最終増益」まで、確かに「増益」の連続。平均営業増益率に限ってみても、82.2%に達する。それが20年12月期では売上高こそ5.4%増も、「56.8%の営業減益、85.8%の最終減益、45円減配の15円配」と一転急落。「上場後初の・・」は文字通り、事実。

 背景は何か。2020年という年がコロナ禍で、不動産投資家に難しい1年であったことは改めるまでもない。前期の決算短信には「黒字確保も・・・」と、「かえすがえす、も残念」の念が滲み出ている。

 だが主たる要因は「一部物件に評価損が発現」。具体的には「創業以来の最大の物件:ビーロット江坂ビル(大阪府吹田市。地下2階地上20階のオフィスビル。かつてはダイエーグループの本社ビルとして、またローソンの登記上の本店として知られた)の売却・評価損」。

 が、ビーロットとしては「創業以来最大物件:ビーロット江坂ビル」売却は、新たに太い事業柱を作る上の施策でもあったと捉えることができる。売却先はビーロット投資法人。私募REITの本格的展開の号砲である。前期で総売上高の19%を占める「不動産マネジメント事業」の強化策。

 四季報新春号の材料欄は【REIT】の見出しで、こう記している。「20年11月末運用開始。主な投資対象はオフィスビル、商業施設、住居で、数年内に運用資産残高500億円目標。上場も視野」。

 無論ビーロットは、不動産投資開発事業の比率を引き下げるつもりなど毛頭ない。前期も30件の物件を取得(前年度比2件増)。この事業がRIET事業の礎になるからだ。

 今12月期は「18.1%の減収(217億円)、18.0%の営業増益(20億3000万円)、152.46%の最終増益(8億7000万円)」計画で立ち上がった。こう読める。「大型物件の売却額剥落もRIET収入加算、保有物件の評価損消滅」。

 動向を見定めたい不動産関連企業と言えよう。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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