三菱H-IIAロケット42号機打ち上げ成功 (2) 糸川教授の意思? 軍用でなく商用軌道に乗るか?

2020年7月30日 08:40

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 平和利用を掲げていても、人工衛星打ち上げにどうしても必要なのが姿勢制御装置なのだ。しかし、良心に従いそれを使うわけにいかなかった糸川英夫教授は、ロケットに「スピン」をかけて弾道を安定化することにした。これは「ライフル」などの弾道を安定させる技術で、ピストルにも当然に利用されている。

【前回は】三菱H-IIAロケット42号機打ち上げ成功 (1) 衛星はUAEの火星探査機「HOPE」

 しかし、それには「風による影響」を修正できない欠点があった。曲射砲などでも、風を観測して修正した方向に発射する技術がある。スナイパー(狙撃手)の技術でも使われている。

 もっと身近では、「ゴルフのショット」を考える時、常に「風の読み」が必要だ。プロゴルファーのショットでは、この技術が大きく精度に影響していることが知られている。野球の守備でも、バッターの打球方角を考える時も同様だ。

 そして、糸川教授の実験では幾度となく失敗を重ね、「スピン」では衛星打ち上げ技術としては実用化が出来ないと考えられてきていた。この失敗には、当時子供心にも「ジャイロを使えばいいのに」と考えてしまった。そうなのだ、姿勢安定化装置はジャイロ技術であり、ナチスドイツでV2ロケットでも既に使っている技術だった。日本でも東大以外では当然に使っていたもので、短距離のミサイルなどでも使われていた。

 そうした時、アメリカは日本にアメリカのICBMを1段目に利用することを売り込んできていた。航空機の分野では、ロッキード事件などのようにアメリカの裏工作は熾烈で、とうとう日本の航空機産業を下請けの立場にして現在に至っている。YS-11からスペースジェットまでの間、国産旅客機の開発が空白となった原因でもある。現在でもF2はアメリカ軍のF16の改装であり、次期攻撃機の開発でも日米共同開発と称して、日本を下請けの立場にしようとしている。

 その中で、日本のロケット開発はよく耐えてきたと思っている。日本がICBMやSLBMなどを装備しないため、人工衛星打ち上げ数ぐらいでは利権の対象とするに足らないと、アメリカは判断しているのであろう。

 今回、UAEのために打ち上げに使用されたH2ロケットは純国産と言って良い出来で、エンジン噴射ノズルなどは、職人芸の「絞り」で出来ているものだ。このような手作業が多く含まれる過程で、日本の「品質保証」の技術が積み上げられ、98%を超える打ち上げ確立を誇ることは大変名誉なことだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: 三菱H-IIAロケット42号機打ち上げ成功 (3) 次期主力ロケットH3コスト半減に期待

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