コロナショック後3カ月における各国の株式情勢 後編

2020年5月16日 19:50

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 続いて新興国を見ていきたい。まず、注目すべきは新型コロナウィルスの発生国となった中国である。なんと中国の株価はEMA75ラインとEMA25ラインのやや上に位置している。

【前回は】コロナショック後3カ月における各国の株式情勢 前編

 もちろん、感染をどの国よりも早く封じ込めたという意味では当然のことかもしれないが、トランプ米大統領が中国に責任を取らせたい理由もわからなくはない。このままいけば、中国の一人勝ちである。

 さて、苦しく見えるのはインドだ。インドの株価はEMA75のはるか下、EMA25に対しても下に位置するが、感染者増加に歯止めがかかっていないことが原因であろう。本来であればアメリカや欧州のように、感染ペースが鈍ってきてもよいものだが、インドは未だに10日間で倍増のペースだ。

 またロシアについては、EMA75の下、EMA25よりも上で、日経平均株価に近い動きをしている。ただし、緊急事態宣言解除を進める日本と、感染者数が世界第2位にまで増加したロシアとでは、徐々に差異が出てくるに違いない。

 そしてブラジルは新興国の中でも一番苦しい展開となっている。EMA75はインドよりもさらに下離れしており、EMA25よりも下にいる。他の先進国は底値から約50%株価を戻す中で、ブラジルに至っては10%すら戻せていないのだ。

 これは歯止めがかからないブラジル国内のコロナウィルス感染者増を一切顧みることなく、経済活動の早期再開を求めるボルソナロ大統領の強硬姿勢に嫌気しているものといえよう。もともとブラジルは近年経済危機に見舞われており、コロナショックが致命的な打撃を与えたともみてとれる。

 最後に注目したいのが、17年前のSARS(重症急性呼吸器症候群)の体験を糧に、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の元、これまで死者をたった7人に抑えきった台湾だ。

 EMA75の上、EMA25の上であることは当然ながら、中長期のトレンドを見る際に利用されるMA200(200日間の移動平均線)に触れる勢いだ。中旬の高値を基準とすれば、底根から70%は株価を戻していることになる。

 このように、アメリカや欧州諸国よりやや強い日本、そしてさらに強い中国、圧倒的な強さの台湾を後目に、不安定なロシアとインド、苦境のブラジルと、各国の株式市場に強弱が付き始めた。

 経済対策の規模ももちろん株価に影響してはいるが、各国がコロナウィルスをどれだけコントロールできているかについては、将来的には貿易のイニシアチブを取ることにもつながりかねない。そのため、危機管理能力が評価されている国に向けて、投資家の資金が集まりつつあるといえるのかもしれない。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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