【株式個別銘柄】新型コロナウイルス治療に期待される既存薬関連銘柄

2020年5月2日 14:28

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 私たちの体の免疫システムは非常に優秀である。過去に感染したことのある病原体等の情報を記憶しているので、同様の病原体が体に侵入しても素早く免疫応答し、重症化を防ぐ。しかし、報道でも多く触れられているように、全世界的に流行している今回の新型コロナウイルス感染症(COVID- 19) はこれまでのどの呼吸器感染症の原因ウイルスと異なり、全く新しいウイルスからもたらされた。

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 新型コロナウイルスの全容は未だ解明されておらず、急ピッチでゲノム情報などから推測されるウイルスの特徴等をもとに、抗ウイルス薬やワクチンの開発が始まっている。簡単に両者を説明すると、抗ウイルス薬はウイルスの増殖を食い止めるもの、ワクチンは体内の免疫システムに働きかけ感染や重症化を防ぐものだ。

 新型コロナウイルスに関連する臨床試験は増加傾向(東アジア86 件、北米 89 件、欧州113件等。4月1日時点)にあり、新薬の開発も始まっている一方で、多くは既存の抗ウイルス薬や抗炎症薬の臨床試験が進められている。

 その中でも多くの臨床試験が行われているのが、米国ギリアドサイエンシズのレムデシビルだ。レムデシビルはエボラ出血熱の治療薬として開発されていたものだが、新型コロナ感染症においても効果が期待できるとされている。

 ギリアドサイエンシズ(GILD)の52週安値は60ドル程度、52週高値は86ドル程度、4月29日の終値は83.14となっており、新型コロナの治療薬に対する期待は大きいことがわかる。

 日本に目を移してみると、臨床試験が多く行われているのは、富士フイルムホールディングス(4901)傘下の富士フイルム富山化学による新型インフルエンザ治療薬、アビガンだ。

 先日報道があったように、日本政府は新型コロナの感染拡大を受けた緊急経済対策に、200万人分のアビガンの備蓄を確保する方針を示した。加えて、諸外国70カ国以上から提供要請があり、政府はすでに30カ国以上に無償提供をするとしている。世界各国と協力しながら臨床試験を拡大する目論見だ。

 市場も新型コロナ治療薬のニュースにポジティブに反応しており、富士フイルムHDの株価は、3月につけた4,152円の年初来安値より大きく値を戻し、5月1日の終値は5,095円となっている。

 富士フイルムのアビガンのように抗ウイルス薬ではないが、対症療法の側面から抗炎症薬(発熱や肺の炎症等を和らげ悪化を防ぐ)として用いられる帝人(3401)ファーマの吸入ステロイド喘息治療薬オルベスコや、中外製薬(4519)・ロシュ の関節リウマチ治療薬アクテムラにも注目が集まっている。さらに武田製薬(4502)は回復患者の血漿を用いた新薬の開発を推し進めている。

 新型コロナウイルスとの戦いは短期的には終わらないことが予想される。新薬の開発や既存薬を使用した臨床試験から実際に治療薬が実用化されるまでには、数カ月から1年以上かかると言われているからだ。

 緊急事態宣言の期限延長が検討されているが、マーケットも不安定な状況が続くと予想される。しかしながら、新型コロナウイルス治療関連銘柄の好パフォーマンスは当面続くだろう。(記事:高木祐二・記事一覧を見る

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