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ROE(自己資本比率)は株式投資には重要な指標で、株主から得た資本を効率よく使っているかを見定めるものである。これまで投資家たちの中には、高ければ良しとする風潮があった。しかし、それは単に高ければ良いというものではないことを、新型コロナウイルス感染拡大が物語ることになった。
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これは投資知識で企業経営が出来るものではないことを示している。ビジネスモデルを理解できない投資家であれば、少なくとも企業実績をROAで見ておこうではないか。企業経営者であるのなら、ビジネスモデルを認識できないレベルでは話にならない。
■基礎知識
ROE(自己資本利益率)とは、自己資本に対する利益率を示す財務指標である。
ROA(総資本利益率) は、総資本(自己資本+有利子負債など他人資本)に対する利益率
ROE(自己資本利益率)は、以下の算式によって求められる。
ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)×100
アメリカン航空は、この5年間(2019年まで)に118億ドルの自社株買いを実施して、ROEが75%(2018年)にまで達した。しかし一方で、自社株買いをするために有利子負債が8割も増えてしまった。それは、「もの言う株主」の言葉で象徴される株主を最重要視する風潮が強まったせいだ。
本来、企業にとってのステークホルダーとは株主だけでなく、顧客や従業員までも示すものだが、「ステークホルダー=株主のみ」と勘違いする人が出るほど株主重視は異常さを増した。資本金を増やすため株主の注目を浴びる高いROEを追い、負債に依存するレバレッジ(借金)経営という泥濘にはまっていったのだ。
それは、配当だけでなく株価上昇をも狙っているからだ。旧村上ファンドなどが行ってきた、大株主となってTOBなどをちらつかせ、取締役人事と引き換えに自社株買いを迫り、市中の株数を減らし株価を上昇させ、高価で株を引き取らせるなどの手口だ。
通常の株主たちでも高額の配当を求めるため、選任された取締役は株主の言うままに、短期間での利益率を求め、株価上昇を求めすぎるきらいがある。しかしそれはビジネスモデルを無視して、長期のビジネスを困難にさせる。
そして今、リーマンショックを超えるほどの打撃を、経済だけでなく社会全体に及ぼそうとしている新型コロナウイルスのパンデミックにより、過度の自社株買いに走って「有利子負債を増やした」おかげで資金繰りにつまる企業が出てきた。ボーイング社も然り、デルタ航空やユナイテッド航空も、過去5年で有利子負債は7割ほど増加しているという。
ボーイング社は、本来、研究開発費に使うはずの資金を自社株買いに投じているという。そのためなのかは不明だが、最新鋭機737MAXの墜落事故を2度も起こして運航停止措置が取られている。本来の製造業としてのビジネスモデルにかけるべき投資に偏りが出たため、事故原因追及や裁判にかける損失が大きくなるという本末転倒が起こっていると言わざるを得ない。
もちろん経営陣の責任であることは間違いないが、ただ高ROEを求めるだけの「もの言う株主」も健全な経営を阻害するものとなってしまうだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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