見えない敵・新型コロナウイルスとの”静かな戦争” (3) 抗体で”予防”と”治療”が可能になるか?

2020年4月22日 17:51

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 韓国の保健当局が、新型コロナウイルスの感染から回復して陰性になっていながら、再度陽性と診断された人が163人を数えたと発表している(4月17日時点)。再度感染した可能性と、体内に残ったウイルスが活性化した可能性に、診断の精度問題が考えられるようだ。

【前回は】見えない敵・新型コロナウイルスとの”静かな戦争” (2) 戦闘装備が足りない!

感染症の常識では、1度感染することによって体内に抗体が形成されるため、再度の感染はめったに起きない。多くの国では感染することによって体内に抗体ができることを見込んだ対応が取られているため、抗体が期待通り形成されていないようだと、今までの対応を見直さざるを得ない可能性が出てきた。

 抗体と免疫との関係について、WHOは「回復者の体内に抗体が形成され、免疫がついているかどうかは不明だ」との見解だ。何らかの理由で十分な免役が得られていない場合には、外出制限の解除などその後の行動に制約がつく可能性が出てきた。

 実際に中国の上海では非常に高い抗体反応が得られた人がいる反面、検出が困難な人もいたということなので、人によって抗体の量に違いがあり、その量によっては再度陽性になる人が出る可能性はあるようだ。

 このため新型コロナウイルス感染症(COVOD-19)により多くの死者が出ているイタリアでは、北部地域で当局が抗体検査に着手し、米国立衛生研究所も最大1万人の血液サンプルを全米から収集して、抗体の有無と感染歴を調べる。検査によって免疫が確認できれば外出制限を外す判断が可能になり、経済活動再開が見えて来る。

 7日にはカナダで、COVID-19の患者を対象とする血漿(けっしょう)投与による治療の臨床試験開始が発表された。COVID-19の回復期患者から得られた血漿に、病原体への感染やウイルスの増殖を防ぐ中和抗体が存在することを確認して患者に投与するという、感染症の治療法としては昔からあるものだ。同様の治療は既に中国、米国、シンガポール、韓国で行われ、有効性が示唆されているものの、臨床例が少なくマニュアルの統一もされていないため、体系的に治療効果を検討するデータとはなっていなかった。

 今回カナダの研究グループで行われるのは、カナダ全土の大学や病院など合計40もの施設が、血液センターの力も借りながら1000例を対象に実施される世界最大規模の臨床試験だ。

 回復期血漿を用いる治療方法について、研究グループでは「経費の負担が少なく、リスクのない治療がすぐ始められる」と、治療方法のメリットを語っているという。この臨床試験で回復期の血漿を投与するグループに割り振られた患者が、どのような回復経過を辿るのかが注目される。

 重篤な症状にある患者が治癒に向かうと確認されれば、患者の治療に役立てられることは勿論、感染の予防効果への期待もある。予防効果が認められれば、命がけでCOVID-19と戦っている医師や看護師へ強力な援軍となり、医療崩壊を回避する効果も期待される。

 1890年代に北里柴三郎が受動免疫を発見したことに由来する、回復期血漿による治療の有効性が確認できれば、長い時間と膨大な費用を投入して行われているワクチンや治療薬の実現よりも、ずっと早い時期に人類が危機から救われる可能性がある。世界の注目を集める所以(ゆえん)である。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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