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中性子星の合体により生成された元素が吸収線を生み出す様子を示した図 (c) 国立天文台、東京大学[写真拡大]
東京大学は9日、宇宙空間上での重元素の生成史を明らかにする、赤外線スペクトル情報の収集に成功したと発表した。発見されたうち約半分は世界で初めて観測されたものだという。
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■宇宙空間上の元素生成の歴史
ビッグバンののち、星の進化とともに複雑な元素が生成されていった。水素やヘリウム等の軽元素はビッグバンの時点で形成されていたが、ほとんどの元素は超新星などの天体現象によって生成されたものだ。
宇宙の歴史で元素がどのように増加したのかを知るには、元素が合成される現象の頻度が明らかにされる必要があるという。とりわけ重要視されているのが「中性子捕獲元素」と呼ばれる重元素だ。中性子を捕獲することで原子核が重くなり、中性子捕獲元素が合成されると考えられる。合成が可能になるためには、天体中の中性子の密度が非常に高い必要がある。
この条件を満たす環境として、中性子星の合体が考えられる。一部の恒星が超新星爆発後に残す中性子星のなかには、連星を形成するものが存在する。この中性子星の連星が合体することで、金やレアアース等の元素が合成されるという。
恒星の化学組成の測定には、光のスペクトルに現れる吸収線が重要な情報となる。だが可視光線のスペクトルについては長年の蓄積があるものの、赤外線スペクトルに関しては情報が確立されていないという。
■誤りを含んでいた従来の情報
東京大学の研究グループは、原子番号が29以上の元素による、一定の波長域におけるスペクトルの吸収線を調べた。恒星のスペクトルは、京都産業大学神山天文台に設置された近赤外線分光器が用いられた。解析の結果、9種類の中性子星捕獲元素によって生じる計23本の吸収線の特定に成功した。
今回発見された吸収線は、理論から予想される108本よりもずっと少ないことが判明した。これは現在の吸収線リストに誤りが多いことを示唆するという。また発見された吸収線のうち約半数は、世界で初めて観測的に存在が確認された。
今回確認された吸収線は、化学組成の測定に活用可能だ。研究グループによると、中性子捕獲元素は中性子星の合体など比較的珍しい現象であるため、金やレアアース等の重元素がどのように宇宙で増加したのかを探るための指標になるだろうとしている。
研究の詳細は、Astrophysical Journal Supplementにて9日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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