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起業家を見極めることの難しさを思い知らされたのが、米オフィスシェア大手のウィーワークを運営するウィーカンパニー(以後はウィーワークと表記)にまつわる事例だ。10年に創業したウィーワークはカリスマと持ち上げられていたアダム・ニューマン氏のもとで、ありきたりのオフィス物件を借り上げ、付加価値のあるコワーキングスペースへと改装して転貸するビジネスモデルで急速な成長を重ねていた。
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コワーキングスペースとは、異なる職業や仕事を持った入居者たちが、同じオープンスペースで作業場をシェアすることだ。設備を共用するため、経費を削減できることや利便性を享受することができる。共用スペースで交流することで、相乗効果として情報の交換や協業が期待できるとPRしている例もある。
一口にコワーキングスペースと言っても、設備投資にかける資金はピンからキリまで相当幅広い。ウィーワークは”上質なスペース”を売りにし、アダム・ニューマン氏が「美しいだけのコミュニティではなく、満ち足りた人生を謳歌できるコミュニティを提供する」と謳っていただけに、相当の経費が投入された”高くつくビジネスモデル”だったようだ。
ところが、どんなに美しい言葉で表現しても、所詮は事務所のコストを安く上げたい起業家たちが多く集うスペースであり、収支が見合う転貸(又貸し)料を設定することが至難という問題を抱えるビジネスモデルでもあった。
ウィーワークは10年の創業以来爆発的とも言える売上の伸長がありながら、まともに利益を計上したことがない。業績の急拡大が資金調達を容易にして、利益を計上できない企業が脚光を浴びるという不健全な状態が続くある時期に、アダム・ニューマン氏と孫会長兼社長の出会いがあった。
ウィーワークスに惚れ込んだ孫会長兼社長の累計投資額は、現在までにSBGとSVFの合計で103億ドル(約1.1兆円)という巨額に及ぶ。もっとも、1月時点で価値が470億ドル(約5兆円)と評価されていた企業であるから、たかが企業価値の20%を若干超えた程度の投資でしかないと、孫会長兼社長が考えていたかどうかは不明だが・・。
そんな企業が上場を目指して公開した証券登録届出書の事業計画が、マーケットの顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまった。現在が経営基盤を固めるための過渡期であることは周知のことで、過去に毎期計上されてきた赤字に対するマーケットの見方にも鷹揚なところはあった。
ところが、公開された事業計画には、赤字から脱却するための明確な道筋が示されていなかった。「こんな事業計画で経営が続けられるのか?」という疑問が膨らんだのも無理はない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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