ガス星雲のイメージ。[写真拡大]
従来地球生命の起源は、何の疑いもなく、地球上の無機化合物から偶然タンパク質を構成している有機化合物が合成され、何らかのメカニズムが働いて現在のDNAの原型が形作られたと考える科学者が大多数であった。
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もちろん、少数派ではあったが、生命の起源は地球ではなく、宇宙のどこから飛来した隕石に付着していた有機化合物であると主張する科学者もいた。
今回紹介する中国科学院の学者たちによる新説(星雲リレー理論)は、生命の起源となる有機化合物が得体のしれない宇宙から飛来したのではなく、太陽系の起源となったガス星雲の中で形成され、およそ100億年の時間を経て現在に至っているというものである。
ところで地球には様々な元素が存在しているが、その事実が示す地球誕生以前の壮大なドラマの存在はあまり知られていない。炭素や酸素のように、水素よりも重く、鉄よりも軽い元素は全て太陽のような恒星の内部で核融合によって生成された。また鉄よりも重い元素は太陽よりも大きな恒星がその寿命の最後に起こす超新星爆発によって生成された。
つまり、地球が誕生する前に、その原料となる元素を創り出した太陽よりも大きな恒星が存在していたことは紛れもない事実なのである。また同様に太陽も地球と同世代の星であるため、太陽が誕生する前に輝いていた恒星が、超新星爆発を起こした後の残骸であるガス星雲から誕生したに違いない。
今回の新説が目新しいのは、DNAのような複雑な有機化合物が偶然誕生するのには、地球上では時間が足りないという以前からの疑問に対する具体的な解決策を示した点にある。地球最古の生命はおよそ42億年前に誕生したとされており、それは地球誕生から3ないし4億年しか経過していない時代である。DNAのような有機化合物が偶然の積み重ねで誕生するには、この時間はあまりにも短すぎると考える科学者は従来も多くいた。
だが、この新説では宇宙誕生から地球上での生命誕生までの時間がおよそ90億年もあり、それだけの時間があれば、DNAが偶然の積み重ねで誕生していてもおかしくないと納得できる科学者も増えることだろう。つまり宇宙誕生直後にすでにDNA合成のための壮大な宇宙実験が始まっていたのかもしれない。さらに膨大な試行錯誤の中で誕生したDNAは超新星爆発をも乗り越え、生き延びただけでなく、その衝撃波によってガス星雲全体にまんべんなく拡散されていったのである。
もしこの新説が正しいとするならば、この宇宙には地球生命の兄弟たちがたくさん存在していることになる。世界の科学者たちの多くは地球外生命を発見できるのは時間の問題であると考えている。中には10年以内に確実に見つかるだろうと唱える学者もいる。今回の新説は孤独な地球人にとってはハッピーな宇宙での出会いの予兆になるのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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