最古のオーロラ現象の記録、楔形文字の粘土板から確認される 筑波大など

2019年10月12日 19:54

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aには「赤光」、bには「赤雲」というオーロラと思われる現象の記録が同定される。(写真:筑波大学の発表資料より)

aには「赤光」、bには「赤雲」というオーロラと思われる現象の記録が同定される。(写真:筑波大学の発表資料より)[写真拡大]

 筑波大学は10日、紀元前8世紀から紀元前7世紀にかけて発生したオーロラ現象を記録する、楔形文字の粘土板を確認したと発表した。古代イラクのアッシリア王に向けてアッカド語で書かれた占星術のレポートを解読することで、オーロラ現象が確認されたという。

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■太陽が原因で発生するオーロラ

 太陽表面で起きる爆発現象「フレア」やコロナ噴出によるエネルギー放出によって、地球の極地近くで観測できるのがオーロラだ。オーロラを発生させるような強い太陽フレアが発生すると、地上の磁場が乱され、電力網や通信網に大きな影響を及ぼす。甚大な被害を及ぼす可能性がある宇宙環境の変動(宇宙天気現象)の発生頻度を把握するためには、過去に発生したオーロラ現象の発見が役立つという。

 氷河から取り出された試料(氷床コア)中の放射性同位体の比率や、樹木の年輪を調べることで、太陽フレアが原因の高エネルギー粒子の発生が同定可能だ。それによると、紀元前660年頃に史上最大級の発生が確認されたという。

 その一方で、文献等の記録によるオーロラ現象は『バビロン天文日誌』等に記載された紀元前567年が最古であり、紀元前660年頃のオーロラを裏づける記録はこれまで発見されなかった。

■占星術のレポートが示唆するオーロラ現象

 今回の研究は、筑波大学、大阪大学、ラザフォード・アップルトン研究所、京都大学、名古屋大学の研究者らから構成されたグループによるもの。紀元前8世紀から紀元前7世紀にかけて、アッシリア(現イラク北部)やバビロン(現イラク南部)の天文占星学者が作成した、『アッシリア占星レポート』の解読を試みた。

 ローマ字化され英訳された同文書を解析した結果、オーロラが発生したと思われる現象の記録3点が同定された。「赤光」「赤雲」「赤が空を覆う」等のオーロラを予想される現象と、その後に起きると思われる地上での事態を記しているという。

 研究グループは、王に報告したアッシリアやバビロニアの3人の天文占星学者による活動時期から、オーロラと思われる現象が紀元前680年から紀元前650年頃に発生したと推定した。この年代は『バビロン天文日誌』等の記録よりも前の最古のものであり、氷床コアから推定される年代に近い。

■眠った文書からさらに古い現象も

 研究グループによると、アッシリア占星術レポートやバビロン天文日誌等の古代イラクの天文記録には、オーロラなどの天体現象の手掛かりが多数残される可能性があるという。また遺跡から発掘されていない記録も存在することから、粘土板資料の調査を続けることで、紀元前の宇宙天気現象を確認したいとしている。

 研究の詳細は、米天文物理学誌Astrophysical Journal Lettersにて7日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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