東大、生命活動の基本的な原理「セントラルドグマ」を理論的に解明

2019年10月4日 19:28

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原始細胞のモデル。情報と触媒機能を担う各分子へと進化する。(写真:東京大学の発表資料より)

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 東京大学は4日、分子生物学の基本原理であるセントラルドグマが、物理学における自発的対称性の破れによって説明可能であることを示したと発表した。

【こちらも】遺伝情報はどのようにして次世代に伝えられるのか 東大が仕組みを発見

■遺伝子と生命活動を結びつけるセントラルドグマ

 分子生物学の基本原理であるセントラルドグマは、1954年に英分子生物学者クリックによって提唱された。核酸分子であるDNAが自身に含まれた遺伝情報を複製すると、RNAへと転写される。これにより作られたタンパク質が触媒機能を発揮することで細胞が代謝し、生命活動の支えとなる。

 有機化合物から現在のような細胞へと進化するのに、数十億年経過したと予想される。細胞において、情報を担うゲノム(DNA)と機能を司る触媒(タンパク質)とが分業化されている。しかし原始的な生命においてはゲノムと触媒は未分化であり、それぞれに特化した細胞へと分化したメカニズムの解明は、重要な課題だという。

■日常に存在する対称性の破れ

 東京大学とニュージーランドのオークランド大学の研究者から構成されるグループは、セントラルドグマが「自発的対称性の破れ」によって説明できることを示した。

 宇宙に存在する素粒子を始めとする基本的な自然界の仕組みは対称性をもつものが多い一方、われわれの身の回りに存在する事物には対称性が成立していない。この対称性が失われる仕組みが「対称性の破れ」と呼ばれるものだ。

 南部陽一郎博士は対称性が自発的に破れる現象を素粒子物理学に適用し、2008年にノーベル物理学賞を受賞している。

 研究グループは、情報と機能の両方を担う複数の分子をもつ原始細胞をモデル化した。分子レベルでは自らが複製されるために触媒活性を抑えるよう進化する一方、細胞レベルでは、自らが増殖されるために触媒活性を上昇させるよう進化する。

 このような相矛盾する進化的傾向をもつ原始細胞のシミュレーションにより、機能と情報をそれぞれ担う分子に分化する「自発的対称性の破れ」が生じることが、解析的に示された。

 研究グループによると、本成果が生命の起源から現在の細胞へと至る進化や複製細胞の構築実験に新たな視点を与えるという。また、機能と情報とが分化する現象はアリやハチ等の社会性をもつ昆虫でも観察されることから、社会の進化を考えるうえでも重要な視点を与えるだろうとしている。

 研究の詳細は、英国王立協会紀要にて掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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