千葉大など、植物の数億年にわたる代謝進化を再現 創薬にも前進

2019年8月7日 09:35

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ホソバルピナス(a)と、シロイヌナズナ(b)(画像: 千葉大学の発表資料より)

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 千葉大学、理化学研究所、かずさDNA研究所からなる植物分子科学の研究チームが、植物の代謝進化を科学的に再現することに成功した。研究チームは、植物が薬用成分を生成するカギと考えられてきた酵素に着目。これを生み出す遺伝子をシロイヌナズナに導入したところ、新しい成分が生成されたことを確認したという。

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 今回の成果により、異なる代謝能力を持つ植物に同様の遺伝子操作を行うことで、天然に存在しない化合物を作り出すことが可能になる。こうした化学多様性の拡張は、創薬のシーズ開発に大きく貢献することが期待されるという。

■植物が生み出す薬効成分

 植物が生成する化合物には、苦味や毒の成分、香り成分や色素など様々なものがある。その中には人体に薬として作用するものも含まれている。

 特にリジンというアミノ酸を原料としたアルカロイド(分子内に窒素原子を持つもの)は、薬効を示すものが多く、アルツハイマー病のサプリメントや鎮痛剤として使用されてきた。こうしたアルカロイドを生産する植物は、リジンを脱炭酸する酵素を持つことが2016年の千葉大学などの調査で判明している。したがって、この酵素がリジン由来のアルカロイドを生成するヒントであると考えられてきた。

■酵素遺伝子の導入とアルカロイドの生成

 研究チームは、リジンを脱炭酸する酵素の遺伝子を、ホソバルピナス(マメ科)からシロイヌナズナへ導入。その結果生成された物質は、既存のものとは異なる、新たな代謝成分であった。シロイヌナズナはもともとアルカロイドを生成しない植物だが、前述の遺伝子の導入によりアルカロイドを生成するようになったのである。

具体的には、導入された酵素によりリジンが脱炭酸されて生じた物質が、元来シロイヌナズナに存在する酵素の働きで代謝されるという流れだ。最終的に、5-アミノペンタノールをはじめとするアルカロイド様の代謝物が生成されたという。

■今後の展望

 実験を主導した千葉大学大学院薬学研究院の山崎准教授によると、遺伝子操作によって植物の代謝の流れを変え、さらに生成されたアルカロイドを特定できたのは大きな前進であるという。異なる代謝能を持つ植物にこうした遺伝子操作をすることで、天然に存在しない新しい化合物を作出することが可能になり、これは創薬のシーズ開発に求められる重要テーマであるとのことだ。

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