葉緑体はどうやって植物との共生を開始した? 阪大などの研究

2018年10月15日 08:07

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葉緑体のタンパク質輸送モーターは、不要になったタンパク質を分解する酵素から進化したものである。(画像:大阪大学発表資料より)

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 植物が光合成に用いる葉緑体は元々植物それ自体とは別の生物であった。葉緑体の祖先はシアノバクテリアという共生細菌だった事が分かっているのだが、その進化と共生については謎が多かった。この問題に関し、葉緑体が成立するために必要不可欠であった、タンパク質を葉緑体内に運び入れるための「巨大」なタンパク質輸送モーター複合体を、大阪大学蛋白質研究所の中井正人准教授ら、茨城大学の中平洋一准教授、京都府立大学の椎名隆教授らの共同研究グループが発見した。

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 そもそも葉緑体の光合成機能は、2,000種類を超える葉緑体タンパク質が、葉緑体の外で合成された後、正しく運ばれることによって働いている。この関係が成立したのは、10億年以上も前である。シアノバクテリアという、それ自体が光合成を行う機能を持っていた細菌が、宿主の真核細胞の中に細胞内共生したことで、この関係は始まったのだ。

 さて、発見されたタンパク質輸送モーター複合体であるが、ATP(アデノシン三リン酸)の加水分解エネルギーを利用したものであることは、2013年の研究で予測されていた。問題はその実態である。今回発見されたのは、7つの異なるタンパク質から構成される、分子量がおよそ200万もある、まったく新規で巨大な輸送モーター複合体だ。

 この複合体は、元来、シアノバクテリアにおいては(つまり10億年以上前には)、不要な膜タンパク質をATPの加水分解エネルギーによって膜から除去し、分解するための酵素であったらしい。それが、シアノバクテリアと植物の共生関係が始まって葉緑体となった後、タンパク質を分解する活性を失い、ATPの加水分解エネルギーを利用してタンパク質を引きずり出す活性の部分が残り、そしてタンパク質輸送チャネルと機能的に結びついたことで、葉緑体タンパク質を外から運び入れる機構に変化したものであるらしい。

 なお、本研究の詳細は、アメリカの科学誌「The Plant Cell」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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