人気を集める少額短期保険 種類も豊富に さらに拡大か

2019年7月28日 07:25

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 少額短期保険(ミニ保険)が人気化しているという。日本少額短期保険協会のまとめによると、2018年度の収入保険料(一般企業の売上高に相当)は前年度比11%増の1032億円と1000億円の大台に達した。

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 14年度から2桁成長が続いている。06年の保険業法改正により登場した少額短期保険会社だが、その数も101社に増加した。ミニ保険の特長は「少額の保険料」で「補償(保証)対象をフォーカスしている点」に求められる。

 前に財経新聞で『弁護士保険』について記したことがある。電車の中で痴漢と間違われた?男が線路を一目散に逃げる、そんな事例が相次ぐ中で生まれた(15年)。いわば「冤罪防止弁護士保険」だ。

 間違われた男がこの保険に加入していれば、駅員や女性に悠然と「いま、弁護士のアドバイスを受けている」「弁護士が駆けつけてくるのでそれまで待って欲しい」と対応すればよい。実際に裁判となれば別枠の弁護士費用は発生するが、当初段階の屈辱からは解放される。

 また時代を反映した商品として『無縁社会のお守り』についても記した。国立社会保障・人口問題研究所では15年時点の65歳以上の高齢者数は、3387万人(総人口の約2.6人に1人)。団塊の世代が後期高齢者の仲間入りする25年には約3.8人に1人が75歳以上になる(3622万人)と推計している。そして内閣府の調べでは15年時点で、総世帯数に対する独居・老夫婦世帯は約56.9%に及んでいる。

 こうした高齢化社会の進捗の延長線上に浮上してくるのが、「孤独死」の問題である。そんな孤独死のリスクに対し、賃貸住宅のオーナー向けに売られ人気化しているのが「無縁社会のお守り」である。

 ミニ保険が人気化、という報に接し改めて少額短期保険を見直してみた。「医師が考えた少額短期保険(長島章社長)」という、失礼ながら「とってつけた」様な社名の会社に出会った。がん保険に照準を絞ったミニ保険会社である。

 NO2には取締役医長:深谷正道なる人物が顔を出していた。商品の企画立案者であろう。「医師が考えて」が頭にふられる商品で既に2度、日本少額短期保険協会から「年度大賞」を受賞している。厚労省などの推計によると、がん治療に要する平均費用は115万円。かつ家族で支えるがん患者数は、日本人の2人に1人だという。備えが必要なことは言うまでもあるまい。代表商品の一つ「医師が考えたシンプルながん保険」について枠組みを調べてみた。

 *がんと診断された時点で80万円が支払われる:同社では「治療の選択肢が広がる」と説明する。

 *万が一、がんで死亡したら300万円が支払われる:患者の心の負担が少なくなる。

 *若い層にも備えて欲しい:保険料が安い。

 現にどの程度の保険料なのか。男性でみると「25歳―29歳」「30歳―34歳」の結婚のタイミングに相当する時期で、前者:年払い3510円/後者:同5030円。定年まで10年余の「55歳―59歳」「60歳―64歳」で2万6330円、4万2240円。これで1年間は「80万円」「300万円」が保証される。

 大手保険会社が手を出しづらい分野を少額保険会社は、拡充しようとしている。だが大手保険会社がグループ企業・子会社等の形で少額短期保険の世界に足を踏み入れ始めているのも事実である。斯界は大手資本の(間接的)参入により、一段と広がりを見せていきそうである。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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