三菱航空機が「MRJ」から、「三菱スペースジェット」に転換するワケ(3-1)

2019年6月20日 17:30

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 2008年に「MRJ」(三菱リージョナルジェット)の開発がスタートした時期に、三菱航空機が懸念していたことの1つが、米国の大手航空会社がパイロット組合と結ぶ「スコープ・クローズ」と呼ぶ労使協定だ。米国では路線競合を制限するために、大手航空会社が運航する基幹路線(ハブ)と、地域航空会社が運航する地域間路線(スポーク)という住み分けがなされている。

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 三菱航空機が開発に着手したMRJは、地域間輸送用旅客機(RJ)という位置付けに当たり、スコープ・クローズの対象となる。その上限値は最大離陸重量が39トン、座席数には76席設定されていたため、90座席のMRJは開発当初からこの協定に抵触することは知られていた。

 当時は、MRJの開発に立ちはだかる数多の懸念事項の1つに過ぎなかっただろうし、早期に解除されるものと楽観的に捉えられていたことだろう。改定の時期には関係部署で相当の関心を集めていただろうが、5度に渡って納入が延期されるという異常事態の前には、スコープ・クローズの協定解除問題に正面から向き合うことが出来なかったのかも知れない。

 例えば16年7月に、米誌アビエーション・ウィークは「米スカイウエスト航空がカナダのボンバルディアとの間で機体整備契約を10年間延長したのは、MRJがスコープ・クローズに抵触しているため、ボンバルディアに変更する含みがあるのではないか?」と伝えている。三菱航空機にMRJを発注した航空会社も航空業界の専門誌も、スコープ・クローズ問題へMRJがどんな対応をするのか、重大な関心を抱いていたことが分かる。

 次にスコープ・クローズが見直されるのは19年末となっているが、米国航空行政の枠組みの中での労使協定で、現在まで三菱航空機の期待が叶うことはなかったテーマであることを考えると、楽観的に解除を期待する根拠はない。納入時期の発表が近いと想像される今が、スコープ・クローズへの明確な対応を示すギリギリのタイミングだった。

 三菱航空機が抱える受注残高はピーク時に447機を数えていたが、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)の日本勢を除く390機のほとんどは米国航空会社からの受注だった。その後、40機の購入契約をしていたイースタン航空が経営危機に陥り、スウィフト航空に買収され、購入契約はキャンセルの憂き目に遭った。

 その他の受注契約の具体的な内容な公表されていないが、大前提として「スコープ・クローズの解除」が組み込まれている可能性は高い。有体に言うと、現在米国の航空会社から受注しているMRJ320機は、いつになるか分からない協定の解除まで、買って貰えない塩漬け状態に陥る懸念があったことになる。(3-2に続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

続きは: 三菱航空機が「MRJ」から、「三菱スペースジェット」に転換するワケ(3-2)

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