少子高齢化に人口都市部集中化のいま、医療体制への不安

2019年6月9日 20:20

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 医療機関の在り様が問われている。

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 一つは、医療機関の偏在である。厚労省は以下の様な調査結果を発表し、具体的な改善策を具現化する方向を示している。

*2017年時点の全国の診療所数は10万1471カ所。5年前に比べ1319カ所、さらにその5年前に対し約2倍に増えている。

*だが例えば1319カ所の増加分の6割強は、「東京23区」「名古屋市」「福岡市」「大阪市」「札幌市」に偏っている。

*伴い、医師数も偏在している。全国を335の医療圏に分け、人口10万人当たりの外来医師数は全国平均で105人。対して東京都心部は192人/大阪市は129人/福岡市及びその周辺は144人。比べて福島県や香川県等では50人を切るところもある。

 診療所(外来医師)の偏りは、過疎地などの患者が、適宜な医療措置を受けられない危険性を含んでいる。改善を促す観点から厚労省は20年度から、医師が多い上位3分の1の医療圏(多数地域)では医師に対し「在宅診療」「休日・夜間診療」「学校医担当」など自治体が求める機能を果たすよう求めるとしている。

狙いは「競争の激しい多数地域の経営難の回避と並行して、示した機能を果たせない診療所が郊外や地方での開業を選択すれば、医師の偏在是正につながる」と説明されている。またこうした方向の推進には「在宅診療拡充⇔入院減=医療費の伸びを抑制」という、社会保障費増大という負担を軽減できるという国策(姿勢)が容易に読み取れる。

そして一つは、後継者難/医療機関の老朽化という問題。日本医師会総合研究機構(日医総研)は調査結果から、こんな指摘をしている。

*経営者の高齢化と後継者不足が、特に小規模診療所に顕著。具体的な推移として20床以上の病院は1990年ごろをピークに減少傾向となり、19床以下の「有床診療所」は2000年以降半減。「無床診療所」は増えてはいるが11年以降廃止・休業が急増、危うい状況にある。

*後継者が決まっていない診療所は86%/病院68%。全産業ベースで懸念されている「後継者不足」率を上回っている。こうした流れは「診療所(病院)の建屋・設備の老朽化」に繋がっている。

*他業態同様、大手へのM&A(売却)などの施策が進めば診療所・病院の絶対数の減少につながる。地方、とりわけ過疎地の「治療難」に拍車がかかり「都市部」へという人口の増加(地方の過疎化)や高齢者医療への希薄化の懸念が増長する。

 さらに一つは公立病院の先行き懸念。これから記す実態は5月30日のCBnews(医療・介護に照準を合わせたネット媒体)で知った。

地域の人口減少や拡大する赤字に対して市立札幌病院(一般626床、精神38床、感染症8床)では「入院収益増・財務改善」を目的に「経営健全計画」を策定、他院や在宅からの急性期患者の搬送能力を高めるため病院救急車の配備を検討している。それまでのつなぎ資金として、自治体から27億円借り入れているという。

CBnewsでは同様の岐路に立つ公立病院の事例を伝えている。また6月3日山形新聞電子版は山形県河北町(人口約1万9000人)にある県立河北病院が、「14科の外来を6科にする方向で検討していることが明らかになり、病院利用者や周辺自治体に不安が広がっている」と伝えた。

 病院の在り様は、文字通り人命と表裏一体の関係にある。いま病院の在り様が真摯に問われている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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