副業は”年金”として活用できるか

2019年6月7日 09:02

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 金融庁の金融審議会は3日、公的年金に加えた”自助努力”の必要性を強調する発表を行い、波紋を呼んでいる。

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 金融庁によれば、95歳まで生きると仮定した場合、夫婦で2,000万円の貯蓄が必要となる。突如として、「2,000万円が必要」と言われ、戸惑う人もいることだろう。副業を活用して有効な対策が可能なのか、考えてみたい。

■副業は現実的な対策の一つになるかもしれない

 2,000万円という数字を突き付けられると圧倒されてしまうが、現実的な対策として副業でシミュレーションしてみたい。

 クラウドソーシングサイトなどで、無理なく月3万円の副業収入を得るとする。税金などの条件を無視すれば、年間で36万円。これを20年続ければ720万円を貯蓄出来る。

 2,000万円には程遠いが、リタイア後でも働く意欲があれば、時間的余裕から収入を増やすことが可能だ。年金に副業収入を加えれば、少々ゆとりのある生活も可能だろう。

 また、副業での収入は個別に口座を設け、”年金”として積み立てる。ある程度貯金出来たら、低リスクで運用することも有効だ。個人的なミニGPIFとして、運用するということだ。

 こうした方法なら、リスクの高さに躊躇してしまう株式投資や不動産投資と異なり、無理なく”年金”を積み立てられる可能性が出てくる。

■ワークライフバランスの点で疑問が残る

 副業する場合、フルタイムの本業に加えて働くことになる。少なくとも2~3時間は確保しなければならないだろう。

 帰宅してからこれだけの時間を確保するのは、それほど容易ではないだろう。さらにこれを何十年間に渡って続ける必要があるとなれば、精神的プレッシャーも見過ごすことはできない。

 子育て世代であれば、家族と過ごす時間を割かなければならなくなる。子供とのコミュニケーションは健全な教育にも不可欠であり、またリラックスにも繋がる。

 プライベートの時間を割いて、個人的に労働を行うわけだから、当然1日当たりの労働時間も増える。フルタイムに加えるのだから、8時間を超え、過重労働と健康への懸念も出てくる。

 副業で”年金”を積み立てるのは、低リスクで誰にでも取り組みやすいことは確かだ。しかし、現状の労働環境とワークライフバランスを考慮すると、現実的にはかなり疑問が残る。(記事:西島武・記事一覧を見る

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