深層学習が捉える世界 レーシングカー、首都高走行、ピッキング、がん発見

2019年5月20日 11:17

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ファナックとPNFが開発しているAI良否判定機能のイメージ図。(画像: Preferred Networksの発表資料より)

ファナックとPNFが開発しているAI良否判定機能のイメージ図。(画像: Preferred Networksの発表資料より)[写真拡大]

 Preferred Networks(PFN)の、AI深層学習についてのさまざまな研究成果が注目される。PFNは、トヨタ自動車、ファナック、国立がん研究センターなど協力して、今注目の自動運転を目指す交通システムや、ロボットアームなどを使用した製造業作業への応用、がん発見などで注目されるバイオヘルスケアなどを重点事業領域としている。

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 画像認識での自動運転システムでは、レーシングカーを人間に替わって操縦し、速く走れるようにする実験だ。人間が教師とならなくとも、次第に走り方を学習し、徐々に速く走れるようになった。しかしプロレーサーより速いのかは、レーサーと競争したわけではないので定かではない。確かに実績をあげているようだが、AIが人間のプロレーサーの能力を超えられるのかは、ぜひ知りたいものだ。

 模型を使った走行実験では、かなりの成果をあげつつあるAI自動運転のようだ。現実の路上での実験も進めているようで、トヨタ自動車は首都高における自動運転動画も発表している。テスラは、完全自動化は既に可能となっているとしているが、トヨタは教師データが十分なのであろうか。

 またPNFは、ファナックとピッキングについての作業研究を進めているようだ。既にかなりの実績に到達しているように発表があったが、ロボットアームの特許を持つ現場の研究者は、「AIはろくに役に立たない」と愚痴をこぼしていた。真実はどのようであろうか?AIによるピッキングは物流では既に使われ始めているが、対象物の高精度な外観検査にもAIが使われ始めている。検査は精度が高くないと社会的問題になるので、AIの慎重な「検査」が必要だ。

 製造での他の応用では、旋盤、フライス作業など切削機械での「熱膨張を学習することで暖機運転の時間を不要にした例」(ZDNet Japanより)があるようだ。

 これは従来、熟練の職人が、機械の大きさ、運転開始時の工作機械の置かれている環境温度、運転開始からの時間などを長年の作業により培った経験値で判断し、目標寸法より故意にずらして出来上り(目標)寸法に仕上げる技である。これが出来るようになるには人間にはかなりの年月が必要で、さらに同じ機械での作業を続ける必要もあった。この調整がAIで可能になれば、FA(ファクトリーオートメーション)にとって有効な技術となる。

 さらにPNFは、AIでがんの早期発見も試みているが、完全でなくとも実用化に踏み切ってほしいものだ。ベテランの医者とAIの診断を併用すれば診断精度が上がるはずで、最後の判断は人間の医者が行うとしても、支援システムとしての価値は高いはずだ。

 AIについてはいろいろな懸念もあるが、実用化に向けての動きはもう止まらない。いや、コンピュータが登場した時と同じように、人間の能力を上げ続けるつもりであるのなら止められない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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