日産・可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン(2) 「可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン」とは?

2018年12月21日 17:44

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量産型可変圧縮比エンジン「VCターボ」。(画像: 日産自動車の発表資料より)

量産型可変圧縮比エンジン「VCターボ」。(画像: 日産自動車の発表資料より)[写真拡大]

■「可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン」とは?

 日産が発表したVC (Variable Compression)は、エンジンの熱効率を上げ、燃費をよくする方策の一つであることは確かだ。それにターボを加えて、高出力化を行い、発進からの高トルクを実現して、使いやすく燃費の良いエンジンを目指している。その基本的技術を確認していこう。高出力ターボ加給を実現し、低回転で熱効率を落とさないことは、矛盾しているため、可変圧縮を使わないと実現が難しいのだ。小さなモーターを48V電源で回し、低速でのサポートを試みる方式などと比較して、実用性はどのようなものであろうか?コストも絡んでいるので、自動車業界は難しい選択を迫られている。

【前回は】日産・可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン(1) カルロス・ゴーンの矛盾 EVでなかったのか?

■高圧縮比のほうが、燃費が良い

 「内燃機関」と呼ばれるエンジンは、「圧縮比」が大きいほうが出力が出る。これは、燃費をよくできる可能性が高いということでもある。そこで、出来るだけ圧縮比を高くする方策が研究され続けている。しかし、「ノッキング」が起きてしまい、ガソリンエンジンでは11~12:1ぐらいのところで限界が出来てしまう。長い間、ガソリンエンジンの熱効率は30%台にとどまってきた。しかし最近では、マツダやトヨタのエンジンも熱効率は40%を超え41%に達するようになってきている。しかし、方式を変えなないと、これ以上は難しいところにきている。

 そこでマツダは、SPCCI(Spark Plug Controlled Compression Ignition)と名付けた方式を開発してきた。これも画期的技術だ。そして、日産の答えはVCT(Variable Compression Turbo)だった。

■アトキンソンサイクルとミラーサイクル・エンジン

 熱効率40%にする技術の一つで、「アトキンソンサイクル」と名付けられた方式がある。実用化されたエンジンとしては自動車にはまだないのだ。「アトキンソンサイクル」と名乗ってカタログに表示されているエンジンは、ほとんどが「ミラーサイクル」なのだ。

 アトキンソンサイクルは、現在の「4サイクル・レシプロ・エンジン」の爆発工程だけロングストロークとすることで、爆発の力を回転運動として取り出すときの無駄をなるべく少なくする技術だ。それを、メカニカルな動きにより、実際にストロークを他の工程よりも長くした方式だ。一方で、ミラーサイクルは、その働きを吸排気弁の開閉を調節することにより、爆発工程だけ実質的に長いストロークとなるようにした技術だ。このミラーサイクルのほうが実現しやすいため、後発の技術ではあるのだが、先に実用化されてきた。現在の省燃費エンジンの多くが、これを取り入れている。

■ロングストロークとショートストローク・エンジン

 「ロングストローク」の必要性については、現在の省燃費の実現と「運転のしやすさ」の両面で捉えておくと分かりやすい。最近では、エンジンに対して期待される性能は、ピーク馬力ではなく、低回転からのトルクに変わってきた。それは燃費の問題でもあり、運転のしやすさの要求でもあった。

 昔は逆に、実用セダンでも高回転出力を求められており、回転のスムーズな上がり方も望まれていた。そこで当然なこととして、ショートストロークのエンジンが望まれたのだ。そうすると、ピストンの上下運動のスピードが軽減されて、ピストンの摩擦抵抗などが減り、エンジンの回転数を上げやすいからだ。しかしそれは同時に、低回転域でのトルクの減少を生む。現在は、燃費を気にしてエンジン回転を上げない運転が実用車では当然となり、低回転で運転しやすいエンジン特性を追求するようになったのだ。それが、現代のロングストローク・エンジンが望まれる理由だ。それは同時にピストンの摩擦抵抗を増大させるなどの問題も多く、日産がドイツの工作機械メーカーに売ってしまった製造技術「ニッサン・マシニング・ラフニング・プロセス」(NMRP)などの必要性が生じたのだ。

 次は、ターボチャージを考えてみる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: 日産・可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン(3) ターボチャージャーとの兼ね合い

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