「光格子時計」のネットワークがダークマター発見に貢献へ 史上初の試み

2018年12月11日 21:55

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米国立標準技術研究所(NIST)が管理するイッテルビウム光格子時計 (c) NIST

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 宇宙全体のエネルギーの約27%を占めると言われているのが、「ダークマター」と呼ばれる光学的に直接観測できない物質だ。ダークマターの候補はいくつか挙げられているものの、天文学者はいまだその正体を掴んでいない。米科学誌Science Advancesは7日、ダークマターを検出する原子時計のネットワークに関する研究論文を掲載した。

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■困難なダークマター検出

 ダークマターは、1930年代初頭にオランダの天文学者ヤン・オールトや、スイスの天文学者フリッツ・ツビッキーによってその存在が指摘された。通常の物質だけでは整合性のつかない重力効果を説明するために持ち出された仮想的な物質が、光を発さないダークマターだ。

 1970年代に、米天文学者ヴェラ・ルービンとケント・フォードによって、ダークマターの存在を間接的に示す証拠が提示された。アンドロメダ銀河の回転速度は中心部と周辺部とでほとんど変化がなく、このことは目に見える物質の分布だけでは説明できない。

 近年研究されているのが、超高精度の原子時計を使用し、通常の物資との相互作用からダークマターを検出する方法だ。

■ますます進化する原子時計

 自転する地球や振り子といった、安定した振動子に基づいて時計は作られる。ところが地球の自転は潮汐摩擦によって徐々に遅くなるため、時計の精度に狂いが生じる。

 そこで登場するのが、原子や分子のスペクトル線の周波数に基づいて作られる原子時計だ。1955年に発明されたセシウム原子時計では、原子が吸収するマイクロ波の振動数を利用し、3,000万年に1秒も狂わないという。

 「光格子時計」と呼ばれる最新鋭の原子時計は、ストロンチウムやイッテルビウムといった原子を閉じ込める光格子をレーザーから作る。光格子に閉じ込められたすべての原子を同時測定することで、正確な時間の測定が可能になるという。東京大学の香取秀俊教授によって解明された光格子時計を使うと、300億年に1秒の誤差も生じない時計が可能になる。

■ダークマターによる重力効果を原子時計で検出

 光格子時計のような超高精度の時計が作られる目的は、日常生活では感じることすらできず、これまでの原子時計でも計測できないような、ごくわずかな時間の流れでさえ捉え、そこから新たな発見につなげるためだ。ダークマターの効果を検出することも、その一つと言える。

 ダークマターによる重力の歪曲を検出するためには、非常に正確な時計が必要となる。ところがダークマターは、通常の物質との相互作用により、原子時計を構成する原子の振動数にも影響を及ぼすという。そこで、光格子時計の出番となる。

 論文を発表した国際研究グループは今回、4つの光格子時計を米、仏、ポーランド、日本に設置し、原子時計のネットワークを作成した。史上初となる試みにより、光格子時計の誤差を除去し、より多くの観測が可能になるという。この研究からどのような発見があるか、今後が注目される。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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