最高峰EVレース、フォーミュラE「シーズン5」開幕 日産、BMW、HWA初参戦

2018年12月2日 23:23

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記事提供元:エコノミックニュース

シーズン5もドラマチックなレースで観客を楽しませてくれることを期待したい

シーズン5もドラマチックなレースで観客を楽しませてくれることを期待したい[写真拡大]

今、「フォーミュラ1世界選手権(F1)」を追い越すように盛り上がりを見せている自動車レースがある。F1と同じ国際自動車連盟(FIA)が2014年より開催している、EVによるレース、「フォーミュラE」である。EVの研究開発の試験場として、さらにはEVの注目度をあげることを目的として開催されている。ガソリンエンジンなどを利用する既存のモータースポーツと比べ、駆動音はとても静かで、走行中に排気ガスを放出しないため、レースはすべて市街地の公道コースで開催されるのが特長だ。

 昨年12月に香港で開幕したFIAフォーミュラE選手権シーズン4は、ドライバー個人タイトル、チーム部門タイトル争いが熾烈を極め、最終戦まで競うこととなった。戦う側にとっても観客にとっても、エキサイティングなシーズンだった。

ドライバー個人タイトルはチーム・テチーターのジャン-エリック・ベルニュで、フランス出身の28歳。2010年の英国F3王者になり、2012~14年にはF1にも参戦していた選手である。

 チーム部門タイトルを勝ち取ったのは、最終戦で5ポイント差をひっくり返したアウディである。過去3シーズンのチーム部門勝者はルノー(RENAULT E.DAMS)であり、今回優勝争いをしたテチーターがルノーのパワートレーンで走るチームであることを考えると、アウディがルノー勢の4連覇を阻止したといえる。

 そしてシーズン5がいよいよ始まる。第1戦はサウジアラビア首都リヤド郊外のディルイーヤで12月15日にスタートする。今シーズンは前季よりも1戦多い、全13戦が組まれ7月のNYでの2戦が最終戦となる。

 シーズン5となる2018-19シーズンは、 日本の日産自動車やドイツのBMW、同じくHWA(メルセデス系列)が新たに参戦。さらに注目したいのが、F1からの転向ドライバーである。F1で11回優勝経験のあるフェリペ・マッサはヴェンチュリーから、そしてストフェル・バンドーンがHWAから参戦する。競技車両もワンメイクのバッテリーユニットとシャシーが一新され、大きな節目となる。

 大きく変わるのがレース方式。これまで、1時間弱の決勝レースを走りきるために、バッテリーが足りず、ドライバーはマシンを乗り換えて走るという風景が独特だった。が、発表された前衛的デザインの新シャシーは、バッテリーの性能向上によって1台で最後まで走り切ることが可能となり、フォーミュラEの風物詩だったともいえるマシンを乗り換える光景が消える。

 また、競技規則も同時に変更された。決勝レースは周回数を定めず、「45分+1周」となる。一方、最大200キロワットのノーマルモードと、最大225キロワットのハイパワーモードの2種類がレース用に規定され、コース中の「アクティベーション・ゾーン」に指定されたエリアでのみハイパワーモードが使える。

 ファンブーストはハイパワーモードでの走行中のみ使える。追加エネルギーはこれまでと同じく100 キロジュールだが、 最大出力は現行の最大200キロワットから250キロワットまで引き上げられる。

 こうした電力コントロールで重要なのが、バッテリーから駆動用モーターに供給する電力を変換・コントロールするインバーターの性能向上と小型化だ。フォーミュラEチームの中で端的な例を上げると、ヴェンチュリーがシーズン3から京都の半導体・電子部品メーカーであるロームとオフィシャル・テクノロジー・パートナーシップ契約を締結し、SiCパワーデバイスを搭載することで、マシンの高性能化を図っている。

 SiCパワー半導体で世界をリードするロームは、マシン駆動の中核とされるインバーターに同社のSiCパワーデバイスを提供してきた。シーズン4からは、さらに進めてトランジスタとダイオードを同梱したフルSiCパワーモジュールを提供。SiCパワー半導体を搭載する以前のシーズン2のインバーター比で、43%小型化と6kgの軽量化を実現した。

 SiCパワー半導体とは炭化ケイ素(シリコンカーバイド)を素材に用いた半導体で、従来のSi(シリコン)に比べて数倍の高電圧と高熱に耐える性能を持った新世代の半導体だ。車載装置のなかでエンジンルームなどの高熱状況下でも冷却システムなどが従来よりも大幅に小型化でき高効率な制御が可能となる。日本のロームは、このSiCパワー半導体の数少ない量産メーカーで、世界をリードしている。

日本企業も力を入れているフォーミュラE。シーズン5もドラマチックなレースで観客を楽しませてくれることを期待したい。(編集担当:吉田恒)

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