乱気流に巻き込まれた国産ジェット旅客機MRJ、どうやってこの窮地を脱出するのか?(前編)

2018年10月26日 21:31

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MRJ(写真: 三菱航空機)

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 国産ジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」が乱気流に巻き込まれている。リージョナルジェット機を巡ってライバル関係にあるカナダのボンバルディアが、アメリカのワシントン州シアトル連邦地裁に三菱航空機を提訴した。理由はボンバルディアのリージョナルジェット機Cシリーズの情報の不正流用である。ボンバルディアは、三菱航空機と協力会社である米エアロテックがボンバルディアのCシリーズ開発関係者を雇用して、カナダ航空局とアメリカ連邦航空局の型式証明関係機密文書と同データを不正に流用したと主張しているようだ。

【こちらも】三菱MRJの生き残る道(1) ファンボロー航空ショーでデモフライト後、お粗末な記者会見

 MRJにはトラブルが続く。13年には初号機をANAに引き渡す計画だったが、5度の納入延期を繰り返し、現在は20年中頃の納入に向けた正念場である。

 7月16日に、イギリスのロンドン近郊で開催されたファンボロー国際航空ショーで、MRJを開発中の三菱航空機は、初めての「フライトディスプレー(飛行展示)」を無事成功させている。売り物の低燃費と低騒音そのままに、競合機を凌ぐ華麗な飛行展示を見せつけた筈だった。

 その日のうちにケチは付いた。飛行展示を終えたMRJは駐機場へ牽引される途中で、その牽引車に接触され機首の一部を破損するという、あり得ない事故の発生により翌日に予定されていた2度目の飛行展示を断念するに至った。

 最終日の18日には2回目の飛行展示にこぎ着けたが、ファンボロー国際高級ショーにおける16日から20日までの商談期間中、MRJは新規受注を受けることはなかった。

 安い買い物ではないので、16日のトラブルが新規受注を妨げた訳ではないだろうが、繰り返される納入の延期によって航空会社がMRJに抱く評価の一端を感じさせる、残念な期待外れであったことは間違いない。前年のパリ航空ショーでも新規受注は獲得できておらず、その後も受注は途切れたままである。

 1月末にアメリカのイースタン航空はMRJがコツコツと積み上げて来た総受注数の約10%に当たる40機をキャンセルしてきた。イースタン航空は昨年6月に経営危機のため米スウィフト航空に買収されていたという止むを得ない背景はあるが、“この時期にキャンセルか”と思うとツキのなさを感じないわけにはいかない。(後編に続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

【後編は】乱気流に巻き込まれた国産ジェット旅客機MRJ、どうやってこの窮地を脱出するのか?(後編)

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