スルガ銀行株の急伸を「信用取引」の側面から考える

2018年9月23日 10:25

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 スルガ銀行の株価が21日、ストップ高(100円高)の620円まで急伸した。年初来高値2569円(1月10日)から年初来安値478円(9月21日)までまさに値を崩していた。ここではその「何故か」については全く触れない。

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 だが、同行の株価急伸については一言発しておきたい。どことは言わないが某メディアは21日の急伸を『スルガ銀行株が大幅上昇 企業統治の改善期待』という見出しで、こう伝えている。「21日の東京株式市場でスルガ銀行の株価が大幅に上昇した。創業家が保有株式の売却を検討していると伝わり、同行の企業統治が改善するとの期待感が広がった。午前終値は前日終値比52円(10・0%)高の572円。創業家の関連企業が持つスルガ銀行の株式は今年3月末時点で15%超。シェアハウス投資をめぐる不適切な融資など不祥事の背景の一つに創業家による経営支配があったとの批判から、資本面での影響力に注目が集まっていた」(原文、まま)。

 この見解を否定するものではない。正論であろう。

 が、スルガ銀行株の急伸は、信用取引という方法の株式投資の一面からも指摘がなされて当然と考える。信用取引も現物株取引同様に、買値・売値の差額で「利益」「損失」が決まる。

 スルガ銀行株を信用取引で買っていた投資家は「一連の不祥事も結局は、トップの退陣。立て直し申請書の(金融庁への)提出で一段落する。しばし時間をおこうが、株価は上昇に転じる」と捉えていたふしが強い。そんな見方に逆風が吹き始めたのは、遠藤俊英・新金融庁長官の「(スルガ銀行に対しては)相応の措置が必要」という発言(7月中旬)だった。

 これを契機に信用取引の「買い残が減少し、売り残が増え始めた」。8月24日時点では買い残(1850万5200株)が売り残の1・59倍。が、その後信用取引倍率は徐々に低下傾向に転じた。そして9月14日には0・81倍へ。その1週間後のストップ高である。「これ以上の下落は見込めない」と判断した買い方筋が、「損覚悟の買い」に姿勢を変えた。いわゆる「踏み上げ相場」の発現(急伸)である。21日のスルガ銀行の株の急伸に「踏み上げ」を感じた。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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