産総研、創薬開発に2種類のAI 薬剤とタンパク質の相互作用を予測

2018年9月2日 10:02

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薬剤とタンパク質の相互作用部位の可視化例(写真:産総研の発表資料より)

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  • 薬剤とタンパク質の相互作用の予測手法(写真:産総研の発表資料より)

 産業技術総合研究所(産総研)人工知能研究センターは8月29日、2種類の深層学習を組み合わせて薬剤とタンパク質の相互作用を予測する手法を開発したと発表した。

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 政府の掲げる「人工知能(AI)技術戦略」の重点3分野の一つが健康・医療・介護だ。特に、創薬開発におけるAIの期待は大きい。

 製薬業界での新薬承認件数は、年20品目程度。ここ十数年横ばいの状態が続く。企業の生き残りには創薬開発が必須である一方、長い研究開発期間と莫大な研究費用が企業の体力を削ぐ。コンピュータやAIなど科学技術の進歩と研究の高度化にも関わらず、新薬の開発件数が横ばいの理由は、膨大なデータ処理量に起因する。

 病気は、病気の原因となる分子(たんぱく質)が活性化することに起因する。他方、薬は病気の原因分子と結合し、その働きを抑える。生体内タンパク質は10万種以上で、ヒトゲノム配列は30億塩基対といわれる。他方、製薬会社が持つ化合物ライブラリーは数万種、仮想化合物の数は10の60乗に達する。

 この膨大な数のタンパク質と仮想化合物の組合せは、更に膨れる。疾患原因となる創薬標的タンパク質を同定し、そのタンパク質と結合して、治癒する組合せが新薬だ。その成功確率は0.004%、2万5千分の1ともいわれる。

 AI活用のみならず、スーパーコンピュータでの新薬の効果シミュレーションは活発だ。今回の発表は、疾患治療に有効な薬剤とタンパク質の組み合わせを高速・高精度に予測する。大規模データを用いた実証実験により、相互作用部位候補を特定した。

●薬剤とタンパク質の相互作用予測の特長

 AI手法の一つであるニューラルネットを用いた深層学習を採用するが、薬剤(原子と化学結合)の深層学習と生物学(タンパク質のアミノ酸結合)の深層学習を組み合わせたことが特長である。薬剤では、グラフニューラルネットで、薬剤の特徴ベクトルを生成。生物学では、畳み込みニューラルネットで、部分配列の特徴ベクトルを生成。薬剤とタンパク質の大規模なデータを用いてこの特徴ベクトルを学習することで、相互作用の有無を予測する。

●創薬開発(産総研、新薬の効果予測)のテクノロジー

 深層学習は、人間の知識や経験だけでは到達できない革新的な新薬の開発も期待される技術だ。薬剤と生物学の2つの深層学習を組み合わせる発想が、相互作用の予測精度を95%まで高めた。従来の先端の予測精度は90%未満であったという。

 実証評価実験は、3万5千以上の薬剤とタンパク質の相互作用のデータを採用。従来のAIよりも低次元(10次元程度)の特徴ベクトルを用いても相互作用の有無を適切に予測。具体的な数値の報告はないが、低次元の特徴ベクトルを用いるため計算量を抑えた高速な予測を可能とする。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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