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アルマ望遠鏡と米国ハワイのジェミニ望遠鏡で観測したこぎつね座CK星。赤色がアルマ望遠鏡で検出したフッ化アルミニウムを表す。 Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Kamiński & M. Hajduk; Gemini, NOAO/AURA/NSF; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton[写真拡大]
7月31日、アルマ望遠鏡から、宇宙ではじめて放射線元素を含む分子が発見されたと、望遠鏡を運営する国立天文台が発表した。この分子はフッ化アルミニウムの同位体分子であり、1670年に観測された新星の爆発によって宇宙空間に放出されたと考えられる。
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アルマ望遠鏡は、国立天文台が欧米の協力のもと、チリの標高5,000メートルの高地に建設したもの。2011年に観測を開始し、惑星誕生のメカニズムや地球外生命の可能性を明らかにすることが使命だ。
今回研究にあたったのは、米国のハーバード・スミソニアン天体物理学センターのトーマス・カミンスキー氏らだ。この研究グループが、アルマ望遠鏡とフランスの電波望遠鏡NOEMAを使って観測した。発見されたのはこぎつね座CK星と呼ばれる天体で、1670年に新星として記録されている。
恒星衝突のなごりであるこぎつね座CK星は、出現直後は肉眼で観測できるほど明るく輝いていたが、現在では望遠鏡を使わなければ観測できないほどの明るさだ。
研究グループが発見したのは、放射性アルミニウムとフッ素が結合した同位体分子から放出される電波だ。放射性原子を含む分子を太陽系の外で発見したのは、今回が初めてだという。
今回こぎつね座CK星から放射性原子を含む分子が発見されたことで、恒星の衝突過程のことが明らかになった。恒星の衝突により、重元素や放射性元素が生まれる星の内部が攪拌され、星の内部にあった物質が宇宙に放出された。
研究グループの解析の結果、衝突した星のひとつは、太陽の0.8倍から2.5倍の質量をもつ赤色巨星だと推定された。今回の観測で、こぎつね座CK星周辺の放射性アルミニウムの質量は、冥王星の質量の4分の1ほどだと判明した。
天の川全体では、太陽3個分の質量の放射性アルミニウムが存在すると考えられているが、質量を推定するために用いられるガンマ線の観測だけでは、その供給源までは突き止められない。恒星の衝突と放射性アルミニウムとの関係が明らかになったことで、天の川に存在する放射性アルミニウムの解明に一歩前進したかたちだ。
「今回の発見ですべてが分かったとまでは主張できないが、恒星衝突がもっと重要な意味をもっているかもしれない」とカミンスキー氏は述べる。
今回の研究成果は、英国の天文学専門誌「ネイチャー・アストロミー」に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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