「ガールズ・ビー・アンビシャス!」ファーストリテ柳井会長が働く女性たちにエール

2018年7月7日 23:49

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記事提供元:アパレルウェブ

 「私がやってきたことは、一勝九敗。失敗の連続だが、その中から成功のヒントを掴み、ただただそれを実行してきた。店を引き継いだ時、年商は1億円にも満たなかったが、今期は2兆1,000億を達成した。失敗するかどうかは、やってみないとわからないし、失敗しないとわからないこともある。失敗の中にこそ成功の鍵があると考えている。だから、失敗することを気にして何もしないより、成功することを考える方が、よっぽど大事だ」
 ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長が、7月5日に都内で開催されたWEF(ウィメンズ・エンパワメント・ファッション)の設立5周年を記念したシンポジウム「ファッションビジネスは“Women’s Business”」の特別対談に登壇した。尾原蓉子WEF代表理事・会長が進行を務めるなか、①これからのファッション産業②企業存続に不可欠なイノベーション③イノを担う人材の育成④女性の活用、という4つのテーマに沿って、ファッション・ビジネスの未来への展望を探るもの。柳井氏は冒頭で、“失敗の連続だった”という同社や自身の歩みを振り返るとともに、ファッション産業におけるイノベーションや人材育成に対する考えを披露。「既成概念にとらわれず、野望を持ち、それを実行してほしい」と働く女性たちにエールを送った。以下柳井氏の言葉を紹介。
小売りの勢力図が変わっても正攻法で挑む
 デジタル化・グローバル化が進み、新興から旧態まで小売りの勢力図が大きく変化していることについて、柳井氏は、「重要なのは、自分のポジションで、自分の責任を果たすこと。顧客が要望することは何かを考え、それに徹すること。私があまり心配していないのはなぜかというと、グローバル市場に台頭している企業はGMSであり、1つのことに特化していない。また、デジタル化が進むといっても、デジタルはコミュニケーションに関わる問題の1つに過ぎず、デジタルのインフラは限りなくタダになると考えている」
 「コミュニケーションの方法がアナログからデジタルに変わることにより、距離や時間の考え方が変わるだろう。世界中のあらゆる人とつながり、あらゆる人の知恵を使えるようになる。これは人工知能を使えることよりも大きなこと。人工知能を使い、ビッグデータを解析し傾向を掴めるようにはなるが、そのデータを正しい論理で見る人間がいなければ意味がない。だから、今まで以上に正攻法でやっていこうと思っている」
 「最終的には、バーチャルもリアルの区別はなくなり、両方の要素が求められる。また、将来的にはアップルもグーグルもアリババもテンセントも、すべての企業と協業できると考えているので、何も恐れることはない。お客様に喜ばれる商品とサービスを提供することを考えることの方が大切だと思う」
 EC化率は現在の9%から30%まで引き上げられると見込む。「店舗の仕事も本業だし、ECの仕事も本業。スマートフォンで買うのか、タブレットで買うのか、あるいは店舗で買うのかという違いがあるだけで、どこでも買えるような環境を作らないと今後は生き残れない」
 また、ショールーム型店舗については、「実験はやってみたいとは思うが、店舗を作ることは考えていない。ショールームで見せるより、タブレットで、いかにリアルに見せることを考えたほうがいい。店舗は、なぜそこにあるのか?という必然性がなければならない。だからお客のためにならない店は消えると考えている。お客のためになる店とは何か?を考えて商売を組み立てていくことが大切なのではないだろうか」と話した。
 「ジーユー」のデジタルストアなど、デジタル・テクノロジーへの取り組みにも積極的だ。「コミニュケーションの方法がデジタルに変わると、同期にさまざまな職種の人が、一緒に仕事をすることが可能となる。企画・店頭・物流・生産すべてを同期化して仕事をすることにより、新しいワークスタイル、また、それにふさわしいコミュニケーションの方法が生まれるだろう。東京・有明の新オフィス「ユニクロ シティ トウキョウ」は、グローバル・ヘッドクオーターとして、世界中の工場、オフィス、店頭がつながり、明確なビジョンを共有していくねらいがある」
東京は世界につながる市場 世界を相手にしてほしい
 日本ではイノベーションや起業に挑戦する人が少ないと言われることについては、「挑戦する人はいるが、世界を相手にやってみようという人が少ないのではないだろうか。私は最初からマスの市場を狙っていた。日本社会のいいところでもあるが、当時は中産階級の人が多かった。そして、東京は非常に恵まれた市場であることは間違いない。関東圏は4,000万人以上の人口があり、日本の消費の半分を占める。しかも東京は全世界に通じている場所。こういう市場はほかにない。だからこそ、ぜひ世界に出て活躍することを考えてほしい。それを考えずに東京の一角でやっていても、何も伝わらない。自分で商売をやる以上は、自分の商売を世界に伝えたいという思いを持つべきだと思う」
 また、「上場することによって、自己実現したと考えている人がとても多い。そこから何をするかが大事なのであって、上場は出発点に過ぎない。上場をエンドではなくスタートとする文化があまりないのではないかと思う」とも加えた。
情熱と専門性がなければ、ゲームには参加できない


 優秀な人材の育成について話が及ぶと、「仕事に情熱を持つこと」と柳井氏。「トップが仕事に情熱を持つと、それが下へと伝わる。情熱があり過ぎて、照り焼きにされることもあるかもしれないが(笑)、仕事をする以上は、トップの思いが全社の思いとなり、双方が一緒に仕事をしたいと思えることが大事だ」と話した。
 自著「経営者のノート」では、経営者に求められる4つの力として、①変革する力②儲ける力③チームを作る力④使命感をあげている。「その考えの根底にあるのは、会社と人それぞれの思いや志が共鳴すること。会社全体のベクトルが合っていなければならないということ。そのためには、何のために会社をやっているのかを明確にしなければならない」と話した。「デジタルが進化しても、それだけでは何も伝わらない。人は人からでないと影響は受けない。だから、幹部の育成についても、人対人による“テーラーメイド”型の教育が必要だ。いい先輩を持つことも必要だろう」
 ポテンシャルのある人材の条件については、「仕事への情熱と専門性があること。それがないと、(ビジネスという)ゲームには参加できない。解説は一流でも実践ができない人、言うこととやっていることが反対の人もいる。自分が幸せであるということは、他人も幸せであるということ。それがわかっている人でなければならない。最近よく使われる言葉だが、“サーバントリーダー”であるという心構えがないと、誰も後にはついてこない」と見る。
 教育プログラム・人事評価・昇進に関する取り組みについても、明確なビジョンを掲げる。「完璧な指標を全ブランド、全世界で作り、それに従い評価する。また評価する人を教育すること。半期に1回の人事評価の際には、店長以上全社員の評価について、上席執行役員全員と人事部が約2日間をかけてすべて見る。そこで評価の偏りがないか調整する。幹部候補生を教育するための特別プログラムも用意している。経営者を育てるのにいちばん必要なのは、実際に経営をやってみること。経営の現場で経験を踏ませることが一番大事なのではないかと考えている」
責任ある職に就かなければ経験できないことがある
 2015年には女性活躍推進室を設置。2020年に女性管理職の割合を全体の30%にまで引き上げるという目標を掲げたが、それを3年前倒しで実現した。その背景について、「グローバル化とグループ化にある」と柳井氏。「私たちの会社には、ブランドを取り仕切る執行役員や、米や中国での法務の責任者、マーケティング担当者など女性管理職として活躍する人がいる。女性の方が向いている仕事はたくさんあると思うので、女性には、自分の仕事で活躍してみたい!という姿勢を持ってほしい。そういう姿勢があれば、ほとんどの仕事は男性以上にできるのではないか。8~9割は女性を採用することもあり得るかもしれない。それほど女性の方が優秀で勤勉だ」という。
 「世界に出ていくには、女性の活躍が不可欠。特に東南アジアでは女性の活躍が目立つ。もしかしたら日本は男性が仕事のし過ぎかもしれない(笑)。気づかないうちに、男性視点で物ごとを見てしまうことも多くあるだろう。女性が活躍する上で、男性側に問題がある場合もまだまだ多いのではないか」と示唆した。
 一方、「女性の多くは、課長になりたくない、部長になりたくない、と自分の中の既成概念にとらわれているのではないか」とも指摘する。「責任ある職に就かなければ、自分が達成したいと思っている仕事上の成果は得られないことが多い。また、いいチームで仕事をしたいと考えているのならば、女性自身がそれにチャレンジするべきなのではないかと思う」と話した。
女性の多様な働き方は企業にもメリットが
 柳井氏は、「優秀な女性ほど産休が短い」ともコメント。「自分の仕事が気になってしまい、すぐに復帰しようとするためだが、私もその方がいいと思っている。25~35歳は職業キャリアを形成する上でも最も大事な時期。産休によってハンデが生まれる可能性もある。会社にとっても女性にとっても、早期復帰が望ましいのであれば、そうするべきだし、働く時間や場所については会社が何とかする。ルールに沿うのではなく、個人を見て多様な働き方を認めてあげるべきだ」と語った。
 同社には、子育て女性店長会という組織があり、「若い女性が多いため、女性が子育てしながら店長職を務めるにはどうしたらいいか?という課題についても会議を重ねている。2人店長制を取り入れ、交互に休暇を取れる体制も整えている」という。「制度は、作ると固定化されてしまう。会社にも個人にもメリットがあるのであれば、特例を認めてあげるべき」であり、会社側の理解や柔軟な理解が必要であることを強調した。
女性の強みを生かせるファッション・ビジネス
 同社の顧客の7割以上は女性であることから、女性ならではの強みを仕事に生かすべきだ、とも語った。「女性は直感力や“感じる”能力が優れている。男性は感じるより、頭で考えてしまう。また男性と違うのは、女性同士で相手の年齢を気にせず会話ができること。さらに、日常的にある美意識が高く、真面目で現実的でもある。こうした点はすべてビジネスに必要な力であり、女性はビジネスに向いているともいえるのでは」と指摘。仕事で強みを発揮するには、「長所を生かすことを考えること。短所は気にせず周りの人にカバーしてもらうことを考えればいい。そして、他人を生かすことで自分も生かされるという、サーバントリーダーとしての心構えが大切」と語った。
 ファッション・ビジネスにおける女性の優位性について、「接客もレジも、女性が対応してくれたほうが、お客は嬉しいのでは。ファッションに興味のある女性は多いはずだし、それを職業にしたほうが、強みが発揮できるのではないかと思う」といい、「とにかく自分自身への既成概念にとらわれないこと。楽観的であること。不安を抱えるのは無駄なことだし、不安があるのならば、成功するための解決策を考えるべきだ。私は社員に、仕事に対する気付きと、次の日に何をするのかを書き出すことをすすめている。それを毎日繰り返すことで、自分ができることに優先順位をつけることができ、ひいては、いい人生を送ることができると考えている」
「やらないこと」は一生の失敗
 最後に女性に送ったメッセージは、「“ガールズ・ビー・アンビシャス”。皆さん、アンビション(野望)が足りないのではないかと思う。ひょっとしたら成功するのでは?という野望を実行し、それが実現できる可能性はあると私は思っている。例え失敗しても、自身がしっかりしていれば問題ない。むしろ、やらないことは一生の失敗だ。私は若い時に服屋という仕事を選び、それをずっと続けてきたことが幸運だった。だから、今の仕事が好きで、続けられると感じるのであれば、その仕事の中で自分が達成したいことは何か?を突き詰めて考えること。それがうまくいく秘訣ではないかと思う」


■WEF 公式サイト

※この記事はアパレルウェブより提供を受けて配信しています。

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