ヤマハ発動機4輪進出(2) 金融技術からでなく製造技術から入るべきだった

2018年7月6日 21:55

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■金融技術からでなく製造技術から入るべきだった

 当初から量産製造技術の分かった者が中心となっていれば、これは避けられたかもしれない。鋼管構造ではスポット溶接ではなく溶接しなければならない。鋼管ベンディングは量産には不向きな点も多い。型式認定獲得用「サンプル車」開発技術と量産技術は別物で、量産技術で高い品質レベルを保つのは容易ではないのだ。ヤマハは2輪メーカーではあるが、ここは基本的にテスラと同じ誤りである。なぜか分からないのだが、「量産」の概念を誤解している経営者が多いのが不思議だ。設計は「量産」を前提に行うべきだが、「サンプル生産」しかイメージできていない経営者、大学教授、ジャーナリストが大多数を占めている。これほど量産品があふれている社会であり、均一な品質を希望していながら、量産技術は見えていないのだ。

【前回は】ヤマハ発動機4輪進出(1) 鋼管プラットフォームでつまずく 開発技術と量産技術は別物

 ヤマハは、鋼管プラットフォームに成功すれば、「高強度プラットフォームが軽く、安くできる」と踏んで技術開発に挑んだのであろう。それは製造技術・生産技術の戦いだ。経営的に考えると、金融技術・資金効率から入りたくなるのであろうが、製造技術の専門家の意見を尊重しておけばよかったことになる。製造の『ばらつき』を知る者は「大変貴重な存在」であると言える。

■第4次産業革命の本丸に迫る技術?

 自動車製造は量産技術が必要になる。この「造り方」でメーカーの優劣が決まってしまう一面を持っている。半世紀前の「B・C戦争」に始まり、ニッサンがトヨタに勝てなかったのは、この造り方の技術だった。それが資金効率に直接結びつくことを、経営者がよく理解できていなかったからなのだ。現在も、この戦いはユーザーの関心のないまま、し烈に続いており、「トヨタ・TNGA」が世界で勝てなければ「日本経済は沈没」する。これを知らずに投資の話をしている経済専門家と名乗る人々が多すぎる。「トヨタが遅れている」などとしきりにマスメディアも書き立てるが、自分の足元を見ていないのであろう。

 ヤマハが4輪に進出できるとすれば、「準4輪車」と見ているようだが、もう一度、鋼版プラットフォーム、あるいはカーボンで挑戦はできないものであろうか?ヤマハは「トヨタ2000GT」のエンジンを開発し、現在も「レクサスLFA」のV10エンジンを開発しているなど長く業務提携しており、トヨタグループ会社と言ってもよい存在だ。もちろん量産に長けた技術者は大勢いるはずだ。是非とも鋼管フレームで量産に成功して、金型不要の生産システムを確立してほしいものだ。それはIoTでの第4次産業革命に寄与する方策であるように見える。3次元プリンターなどと組み合わせると、多品種少量生産の生産技術革命につながるからだ。すなわち、それは量産の概念を意識しないで発注できる「ユーザーのわがまま」を、さらに実現することになる。「ユーザーのオーダーメード、ネット発注・世界で空いている工場へ製造指示」の「受注生産」を可能にする技術になるのかもしれないからだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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