トヨタ・クラウン/カローラから始まる「コネクティッド」は新商品開発に革命を起こす

2018年7月5日 06:57

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クラウンのMyTOYOTAの画面。(画像: トヨタ自動車)

クラウンのMyTOYOTAの画面。(画像: トヨタ自動車)[写真拡大]

 クルマにおいてネットで繋がることがどのような変化をもたらすのか?ユーザーの視野からは、スマホで繋がることとほぼ同じであると見える。しかし、GPSデータ、コンディションデータが自動的に関連付けられて集積されると、ことは様変わりする。「ビッグデータ」と呼ばれる塊だ。そこに何が蓄えられたのか?実は誰にも全容は分からないと解釈すべきなのだ。

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 タクシー業界では、すでに位置情報、実車情報、曜日、天候などビッグデータとして解析すると、客待ちの位置やタイミングが分かるシステム(配車アプリサービス)を作っている。AIによるデータ解析の優れたところは、現在まで「人間が知らない概念」を発見することだ。しかし、現在のところの「分析結果表示」では、「新概念」を表示できていない。これはもったいないことで、至急改めることだ。要点は、「評価基準」だろう。それは1・2次元に限らずに「多次元」で表すことも選択できることが必要だ。「AIの分析結果の分析」とも言ってよい動作だ。

■コネクティッドは新商品開発に革命を起こす

 マーケットリサーチ(MR)による新製品開発では、「ポスレジのデータ」すなわち「顕在化している市場」と、「アンケートデータ(実現できていない顕在市場で潜在市場ではない)」を合わせて、商品のイメージを組み立てていく。「60点主義」と言われ、トヨタが半世紀余り得意としてきた手法だ。最近では、マツダがかなりの精度を持って行っているのが感じられる。つまり、これまでのMRでは「人間が意識できていない市場」は表れないのだ。

 「ヒット商品」の秘密がここにある。つまり、潜在市場にマッチしたとき、爆発的にヒットするのだ。しかし、これまでほとんど「担当者の勘」の世界だった。

 トヨタ・クラウン/カローラのコネクティッドは、実車状態のデータを常に収集できることになる。オーナーも気づかない部分も含めて、自動車の実態データとなる。これが意味するものは何であろうか?

 AIの分析手法は「分類整理」だ。その関連性と結果を同時に集積し、全体像を描くことが出来る。人間が知らなかった、あるいは自動車と関連性のないものと認識している概念まで、導き出すことが出来る。つまり、「潜在市場」も同時に視野に入れることが可能になるのだ。

 20年ほど前、物流コンサルタントとして活動していた時、「潜在市場」と「顕在市場」は一体であり、そこに基準軸があることに気付いた。その「基準軸」が分かると、「潜在市場」を見つけることが出来た。そこに向けて宣伝活動をすると、大幅な売り上げ増加がみられたのだ。つまり、誰も意識できていない「潜在市場」を顕在化することに成功できたのだ。

■広告手法も連動すること

 これによって「広告手法」も改革することが出来、それまでの2~4倍の売上げ増加は当たり前となった。関係者に理由を説明するだけでは理解は難しいので実践して見せたのだが、それでも「受け入れられない者」が約半数以上であったと理解している。これにPHP研究所から声がかかり単行本として出版したが、出版編集者も理解が出来ない様子だった。

 また大型書店を運営する三省堂・ブックセンター・丸善などでも話を聞きたいとのことで話をしたが、行動したのは、「丸善」だった。しかし、「潜在市場」を掘り起こすように宣伝していくことが理解しにくいところのようだった。丸善は一部で実験したところ、「1人当たり売上」は1.4倍になったようだ。しかし、広告手法と連動して行えていないので、その程度なのだ。これが私ではなく「AIによる分析だ」となれば、皆「ブランド志向」であるから試してみるのだろう。人間の理解の基準とは根拠のないものなのだ。

■三河式「市場類推法」

 「ビッグデータ解析」でAIが導き出す結論は、「関連性の分類整理」である。そこには「潜在市場」を含めて、「市場全体」が見えてくる。たいがいは「顕在化している市場は2割程度」だ。残る「8割の潜在市場」に向けて「広告宣伝活動」をしていく構造を理解できれば、宣伝の効率化は目覚ましいものがある。

 AIとビッグデータによって、MRは新しい時代に入った。まずAIを活用したければ、三河式「市場類推法」を理解することだ。これから「自動車の造り」は劇的に変わってくる。若者は5年後を楽しみしてよいだろう。必ずしもEVになっているとは限らないが。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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