なぜ?歯科医院の倒産が増加

2018年5月10日 11:28

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 安定的な職業の一つとされる歯科医院の倒産がこのところ増加している。東京商工リサーチによると、2017年度の倒産件数は20件となり、前年度からほぼ2倍増(前年度比81.8%増)となった。1994年度(20件)以来、23年ぶりの20件台となった。負債総額も11億500万円(同36.2%増)と、件数増加に伴って膨らんだ格好である。

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 倒産件数は、2年連続で前年度を上回っている。年度では、2015年度が7件、2016年度が11件と比較的件数が少なかったが、2017年度になって急増した形だ。負債総額は、5年ぶりに前年度を上回った。ただ、負債5億円以上の大型倒産は2年連続で発生がなく、同1億円未満が18件と、前年度の8件から2.2倍増となった。同1億円未満の構成比は90.0%で、小規模倒産が大半を占めている。

 ここに来て、なぜ歯科医院の倒産が急増しているのか。考えられるのは、小規模倒産の増大に見られるように、歯科医院は、開業時の設備投資はリース充当などで、比較的少ない自己資本で開業できるため、参入ハードルが低い。そのため、繁華街や市の中心部など人の集まりやすい地域で開業が相次ぎ、競合が激化している。一方、近年の人口減少や顧客の予防的健康志向の高まりによって、歯科医院の顧客獲得が次第に難しくなっている。

 それと見逃せないのは、人手不足倒産である。歯科医院に不可欠の歯科衛生士や医療事務資格者の確保が困難な状況になっている。

 歯科医師国家試験の合格者は毎年2,000人前後で推移している半面、日本の人口は2008年をピークに現在1億2,670万人(2017年10月1日)にまで減少し、2055年には1億人を割り込むと予測されている。歯科医院の経営環境の改善はきわめて難しいといえる。(記事:南条 誠・記事一覧を見る

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