理研が新たな気象予測方法を開発 台風や豪雨の予測を10分ごとに更新

2018年1月30日 05:49

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2015年に発生した台風13号の予想シミュレーション。(画像: 理化学研究所の発表資料より)

2015年に発生した台風13号の予想シミュレーション。(画像: 理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 理化学研究所(理研)は、10分ごとに更新する気象予測手法の開発に成功し、台風や集中豪雨、それに伴う洪水の予測が、より正確に行えるようになると発表した。

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 開発を行ったのは理研計算科学研究機構データ同化研究チームの三好建正チームリーダーと本田匠特別研究員、気象庁気象研究所の岡本幸三室長らの共同研究グループ。

 研究グループの発表によると、スーパーコンピューター「京」と気象衛星ひまわり8号の観測によるビッグデータを用いることで、10分ごとに気象予測を更新することが可能になるという。

 気象衛星ひまわり8号は、それまでのひまわり7号の約50倍のビッグデータを生み出す高性能センサーを搭載しており、10分ごとに地球全体を撮像することができる。

 研究グループは、そのひまわり8号から送られてくる観測データの中でも、雲から放射されている赤外線データに注目した。

 雲から放射されている赤外線データを利用し、スーパーコンピューター京による気象シミュレーションとのデータ同化によって、台風の細かい構造がコンピューターの中で再現することができた。さらにその状態を起点として、今後の台風の変化などをシミュレートすると、かなりの精度で予測できていたのである。

 世界的に見ても、天候予測に赤外線データの利用はしているが、雲の領域を数値化することは難しく、赤外線データの利用は晴天の領域に限られている。雲に関しては画像や風向、風速などから予測しているのが現状である。

 研究グループは2015年7月に発生した台風13号について、事前に予測したデータと実際のデータと比較してみたところ、ほぼ実際と同じように再現されていた。つまり、台風13号は、ほぼ一日前にその規模や進行ルートなどが予測できていたことになる。

 その後、さらに研究を重ね、今回の発表に至った。

 今回の研究成果により、台風や豪雨、それにともなう洪水や崖崩れなどの災害リスクを、これまで以上の精度で天気予報として発表できるようになった。そして、今まで1時間ごとに更新されていた気象予測が、10分ごとに更新できるようになったのである。

 気象庁の調べでは、日本列島に近づく台風は年間の平均11.4個。そのうち上陸するものは2.7個と台風大国である。それにともなう豪雨や洪水、土砂災害などは甚大ものとなっている。昨今の異常気象によってゲリラ豪雨などの被害も増える一方である。

 今回の発表で「将来の天気予報に革新をもたらすと期待できます」と研究チームは締めくくっている。(記事:和田光生・記事一覧を見る

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