神鋼から始まった不正ドミノはどこまで続く 三菱マテ・東レの子会社でも

2017年11月28日 17:38

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 23日、三菱マテリアルは子会社の三菱電線工業、三菱伸銅、三菱アルミニウムの3社で検査データに改ざんなどの不正があったことを発表した。顧客企業と契約した品質基準に満たない製品の検査データを、書き換えて出荷するという神戸製鋼所でも行われた手口が、三菱電線と三菱伸銅でも同じように行われていた。データ改ざんがあった製品は、258社にのぼる顧客に対して出荷されていた。神戸製鋼所に続く同様の問題であり、国内の素材業界における品質管理のあり方が改めて問われている。

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 三菱電線工業で品質基準に満たない製品が見つかったのは、主にゴム素材で油や水などの漏れを防ぐシール材だ。シール材は航空機や、産業機器、自動車などの幅広い分野で使用されている産業資材となり、箕島製作所(和歌山県有田市)でデータを改ざんしていた。不適合品が納品された可能性がある顧客企業は229社で、そのうち40社への説明を終えたという。

 三菱伸銅では車載端子や電子機器などに使用される、銅製品の硬さや引っ張り強度のデータを改ざんしていた。若松製作所(福島県会津若松市)から29社に納品された可能性があり、その半数へは説明を終えている。

 さらに、三菱アルミニウムでも不適合品の出荷はあったが、すべての顧客への安全性確認が済んでいるとして、顧客などの数や不正品の種類、出荷額などは公表されていない。

 三菱電線工業が、検査データの改ざん製品を出荷していた問題では、自衛隊の航空機や艦船のエンジンの一部に、仕様書の要求値を満たしていないゴムが使われていたことが明らかになった。当面安全確認を急ぐものの、現状で不具合が確認されていないため直ちに運用停止などの措置はとらないという。

 神戸製鋼所の問題をうけて、素材メーカーは同様の事例がないかどうか調査を進めている。長く続く取引慣行にマヒした素材業界のなかから、新たな不正が出てきてもおかしくない。今回の三菱電線工業の場合でも、16年12月に親会社の三菱マテリアルが実施した品質監査がきっかけとなり、今年2月には三菱電線工業が不正の実態を把握したが、三菱マテリアルに報告したのは半年以上も経過した10月になってからだったという。この不自然な時間の経過を斜めに見ると、神戸製鋼所の問題が明るみに出なければ、公表されていなかった可能性もある。

 28日には東レの子会社で、同じく検査データの改ざんがあったことが公表された。16年7月の社内調査で把握していた事案で、ネットの掲示板に書き込みされたために公表に踏み切ったという。内部告発に追い込まれたとの印象を受けてしまう時間の経過だ。

 頑固ながらも実直な職人が支えてきた日本のモノづくりは、幻想ではなかった筈だ。もし過去のいずれかの時期に道を誤った事例があるとするなら、ケジメを付けるのは今だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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