神戸製鋼所、株価の半値戻しにはどんな要因があるのか?

2017年11月14日 21:39

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 10月16日に年初来安値の774円にまで沈んだ神戸製鋼所の株価が、1100円前後に定着する回復ぶりを見せている。10月8日に発覚し、株価暴落の原因となった大規模な製品データの改ざん問題は、その後も沈静化とは言い難い状況で、むしろ深刻化しているにも関わらず株価は、9月20日に付けた直近の高値(1357円)との比較では半値戻しとなっている。マーケットはこの問題が、峠を越えたと判断し始めたのだろうか?

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 神戸製鋼所の製品は原材料であるため、2次加工メーカーや最終製品製造メーカーでの加工作業が不可避的につきまとう。しかもその流通や工程は複雑で、場合によっては相当に細かい。神戸製鋼所からの製品データも迅速に提供されているとは言い難い状況にあり、安全性の確認が円滑に進んでいないケースも多いという。

 例えば、飲料品メーカーの場合では、飲料の缶は製缶メーカーに製造させたものが納品され、飲料を充填して出荷となる。飲料品メーカーには当初の製缶メーカーとの契約時を除くと、そもそも強度に注意を払うべき局面が到来しない。今回の事例についても、神戸製鋼所からの通知も製缶メーカーからの回答も、飲料品メーカーにとってはリアリティーの乏しい、書面上や口頭のやり取りに過ぎない。返事を受け取るまでは緊張の日々を過ごし、極限の焦燥感を味わうであろうが、とばっちりみたいなものだ。

 そもそも、神戸製鋼所に対して求められた製品の性能レベルは、最終製品が必要とするレベルを無駄に超過しているケースが多いという。求められた性能レベルがオーバースペックであったため、実際に納品された性能未達製品が、概ね求められる製品強度を満たしているという皮肉が発生した。現在は市況も安定し、業界の製品供給能力にも余裕がない(神戸製作所を含めて)ギリギリの状況にあることから、神戸製鋼所以外に発注先を変更することは容易ではないという。信用が地に落ちた割には、旺盛な受注環境に助けられて取引先が激減する心配はないことを、マーケットは見透かしたのだろう。

 日本の“ムラ”の中では当面大きな動きはなさそうだが、グローバルの長期的な視点で見ると、欧州連合(EU)の専門機関である欧州航空安全機関(EASA)が域内で運航する航空会社などにサプライチェーンの確認や、使用状況の報告、代替品がある場合は合法性が確認されるまで使用を停止する旨の注意喚起を行っていることや、米司法省の仕様不適合に関する書類の提出要求は大きな懸念材料だ。今回の提出要求は罰則付きの「サピーナ」と呼ばれる召喚状だという。これに従わないと法廷侮辱罪や司法妨害罪に問われる可能性もある。神戸製鋼所を巡る米欧の動きが日本に逆輸入されることは避けられない。どんな情報が株価を上下させるのか?株価の動向にも無頓着ではいられないのだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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