ロボット事業再参入のソニー「aibo」、どれだけの飼い主に恵まれるか?

2017年11月8日 06:33

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ソニーの「aibo」(写真: ソニーの発表資料より)

ソニーの「aibo」(写真: ソニーの発表資料より)[写真拡大]

 ソニーは1日午前11時、東京・品川の本社で犬型ロボット「AIBO(アイボ)」の新型となる、「aibo」販売を発表した。「アイボ」とは人工知能(=AI)のEYE(目)を持っていることと、人の良き相棒、を組合わせた造語であると言われているが、ひところはパソコンの「VAIO(バイオ)」と合わせてソニーの存在を熱くアピールする固有名詞であった。

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 「AIBO」は1999年6月に衝撃的なデビューを果たし、その後、3代のモデルチェンジを重ねたが、2006年の経営トップ、ハワード・ストリンガー氏の時代に本業であるエレクトロニクス部門の強化と引き換えに、「非中核事業」と分類されて生産を終了し、AIBOシリーズの歴史はピリオドを打った。

 2000年のITバブル崩壊による株価急落で体力を落としたソニーはその後も、2008年のリーマン・ショックや、2011年の東日本大震災と相次ぐ経済の激変に直面して新規事業に向かう勢いをそがれていた。

 皮肉なことに、ソニーが「AIBO」から遠ざかっていた10余年の間に、クラウドやAIなどなどの技術が向上してきた。機が熟したのであろう、2016年6月にソニーの平井一夫社長はロボット事業への再参入を宣言し「ファクトリーオートメーション(FA)などの工業用も含めて幅広に展開する」としていたが、第1弾は同社のロボット事業の原点で、今後のマーケットに期待が持てる家庭用を選んだようだ。

 発表会は11月1日午前11時(ワン・ワン・ワン・ワン・ワン)で、発売はイヌ年の2018年1月11日(ワン・ワン・ワン)。とことん“イヌ”にこだわった社内の様子が垣間見える。以前のAIBOと比較してaiboが最も進化したと思えるポイントは「AI」である。AIはaiboの本体とクラウドの両方にあり、この2つを同期させることでaiboが成長する。そしてオーナーの同意を基に、これらのAIを集合知として蓄積してaiboの成長に役立てる。結果として、同じaiboは1台も存在しないことになる。さらにaiboのデータはクラウド上でバックアップされているため、例えばaiboを買い替えたとしても希望すれば引き継ぐことができる。目には有機ELディプレイを搭載することで、感情表現が多彩になった。腰にセットした魚眼カメラは「SLAM」対応となっているので、自分の現在地をマップの中で把握することができる。動作については前モデルよりも2軸増加して22軸となったアクチュエーターが、複雑な体の動きを同期させ、まるで生き物のような動きを表現できるという。

 aibo本体は19万8,000円(税別)で発売されるが、クラウドで解析された情報によってaiboを成長させ、データをバックアップさせるというaibo本来の機能を発揮させるためには基本プラン(3年で9万円、または月払い2,980円)への加入が必須である。また故障時の修理代の割引を受けられる「aiboケアサポート」は、任意加入であるが3年間で5万4,000円、1年では2万円を設定している(いずれも税別)。

 ロボットは話題性が高い割にはユーザーのすそ野は狭く、先代のAIBOは累計で15万台の売上だった。新しいaiboがどのようにマーケットに受け入れられるのかが注目される。aiboはソニーが普及の先頭に立ち、他社との協業の枠を広げて、多くのユーザーを飽きさせないことが何より大切であろう。ソニーが新たなビジネスモデルを開発する試みが始まったようだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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